自室で睡眠薬を大量摂取し… 

Aさんは、毎年担っていた重要なポストがある学校行事を楽しみにしていたのだが、突然、理由もなくその担当を外されたという。

「私は教頭に『どうして私がこの行事のメンバーに入っていないのか』と聞きに行きました。すると、教頭は『A先生は病気でよく休むしアテにならん』と半笑いで言い、主任もその言葉にかぶせるように『まったく、そんなこともわからないなんて鬱陶しい』と嘲笑われました。

私はそれまでどんな言葉を言われようと耐えられましたが、その行事のメンバーを外されたことが悔しくて悲しくて、プツッと心の糸が切れてしまったのです」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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Aさんは帰宅後、自室で睡眠薬を大量摂取し、薄れゆく意識の中で手首を切って自殺未遂を図った。

「なぜ、その程度でと思われるかもしれませんが、私にとってみたらその行事の役割こそがモチベーションでもあり、それを軽んじられたことに絶望感を覚えたのです。

幸いにも、同居していた母が動揺したのか救急ではなく警察に通報をしてくれ、駆けつけた警察官が私の話を聞いてくれました。『生徒たちも悲しむからそれだけはやめてくれ』と」

その後、Aさんは心療内科に行き病休を取り、ふたたび復職を試みようと考えていたが、教頭の勝手な行動により退職を余儀なくされた。

「心療内科で診断書を書いていただき、病休にしたつもりだったのですが、教頭に勝手に年休に変更されていて……。

年休が3日間ほどしか残っていないタイミングでそれに気づきましたが、それと同時期に同居する母が認知症を患い介護が必要になったこともあり、泣く泣く退職せざるを得ませんでした」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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こうして「定年まで勤め上げること」を目標にしていたAさんの志は半ばで断たれた。

Aさんは教員不足の課題についてこう訴える。

「文科省が6年後までに段階的に教員の給料を引き上げるなどと言っていますが、それでは遅すぎます。それに給与引き上げと同時に必要なのは、教員が授業やテストの準備以外にも担わされている事務的作業をする事務員の配属だと思います。

しかし、それ以上に問題なのは、やはり教員の質の低下だと思います。私が教員を目指した頃の倍率はとても高かったんですが、今は誰でもウェルカム状態でどんな人でも教員になれる状況です。

これでは質は下がる一方なので、まずは、教員の質を上げることが教員不足の解決の第一歩だと思います」

昨年度、精神疾患で休職をした公立学校の教員は、過去最多となる7119人を更新したことが文科省の調査で分かっている。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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長時間労働、支払われない残業代など、さまざまな理由で、教師になろうと思う人が減少している現在において、労働環境の早急な改善は不可欠だが、それに加えてメンタルヘルス対策もしっかりとしなければ、日本の教育界の未来は危ないといえるだろう。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班