コメ不足は農水省の大失態なのか

その一方で、今回のコメ不足は、買い占めが原因ではなく、根本的にそもそも生産量が足りていないとの指摘もある。『農協の闇』や『対馬の海に沈む』の著者で農業ジャーナリストの窪田新之助氏に話を聞いた。

「今回のコメ不足の最大の原因は、長年にわたる減反(政府によるコメの生産量を調整する制度)と、それに対する産地の隷属体質です。そもそも農水省は、需需要給も流通の実態も把握できていません。それは今回のコメ騒動で明らかです。にもかかわらず、農林水産省は高米価を維持するために、いたずらに減反を続け、コメの生産量も生産力も下げるようなことをしてきました。

コメが不足しているなら、市場に反映され、機敏な農家や産地は増産します。しかし、実質的にコメには市場が存在しません。現物市場や先物市場が創設されるたびに、農協がつぶしてきたからです」(窪田新之助氏、以下同)

昨年夏のコメ不足のとき、農水省は10月から新米が市場に供給されるので、それで解決されると主張してきた。しかし結果は、解決されないどころか、より状況はひどくなった。

米農家を営む男性(画像/ Shutterstock)
米農家を営む男性(画像/ Shutterstock)

前出の米穀店の店主は、今はコメ不足によって新米を“先食い”して消費している状態であるため、コメ不足の状態は変わらず、値段も下がることはないと話していた。備蓄米の放出のタイミング、新米による市場変化の予測など、なにからなにまで、農水省の行動は失敗だという。

「結局、市場がない中で、産地は農水省の『コメはある』という主張を信じ、再び減反していきました。だからコメ騒動は1年で終わらず、2年も続いてしまったのです。先ほど述べた『需給も流通の実態も把握できていない』について付け加えると、農水省の作況調査は実態を把握できていないと思われます。

というのも、農水省は2024年産を“平年作”と発表していましたが、関東の農家から出来秋になって、『まったく取れていない』『今年は昨年よりもヤバいことになる』という声が私のもとにいくつか届いていたのです」