息子への児童虐待を疑われる

ASDの長男は不登校からうつ状態となった。暴力は止まなかった。部屋の家具を破壊するため、生活安全課に何度も通報したという。

そんな状態だったにもかかわらず、児童相談所は、彼女の虐待が原因だとして、子への施設入所を認めろと親子を引き離した。

「私は自分がされたような虐待を子にしないことを最も気遣ってきました。虐待なんかするわけがない。何よりも自分が嫌な思いをした、養護施設に息子を入所させることに抵抗がありました」

施設で暮らしだした息子は、やはり自分が遭ったように、物を壊される・お金を盗まれるといったいじめに遭う。

長男は小学校6年生から高校1年生までは施設にいたが、居心地の悪さから、たびたび家に帰ってきた。土日祝日や長期の休みは家で過ごすような状態で、高校1年生の時に施設を退所した。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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現在は、進学のために独立した娘が週末に帰宅し、息子は家にいるという3人暮らしをしている。福祉がなければ生きられなかった。だが、その福祉に翻弄されたように見えるOさんが今、思うことを聞いた。

「“普通の家庭” がどうなのか分からないのですが、娘には就職する年齢までは一緒に暮らして欲しかったです。だけど、芸術家肌の娘にはカメラマンになるという夢があります。応援したいです」

だが、Oさんの寂しさは、子どもたちが一番よく分かってくれるという。

「今でも、布団に潜り込んで甘えてくれたり、逆に私が心の傷を癒されています」と照れ臭そうに笑う彼女に、虐待の影は表面的には見えない。

厚生労働省が出す「子ども虐待対応の手引き」によると、子ども虐待はいくつかのタイプに分けられるが、いずれにおいても子どもの心身に深刻な影響をもたらす。

児童養護施設においても虐待経験者への支援を強化することが求められている。Oさんもいまだに、フラッシュバックに陥ることがあるという。

しかし、その保護先の、児童養護施設でさらに職員や子ども間の虐待が存在し、厚生労働省は、ようやくその実態調査に乗り出したような状態だ。

子どもは社会全体で育てるという大人たちの意識改革が必要なのではないか。

取材・文/田口ゆう