帰宅中、突如「もしもーしっ! 久しぶり! 元気してる?」
喫茶店で待機し、23時過ぎに全ての接客が終わったまりてんさんとラブホテル街で合流した。
「お腹空いたのでラーメン食べてから帰るんですけど、来ます?」(まりてんさん、以下同)
まりてんさんから誘って頂けたので、ラブホテル前に待機していたデリバリーヘルス店の送迎車に乗り、ラーメン屋まで同行させてもらうことにした。
送迎車に乗ると、まりてんさんがスマホを取り出した。「動画の切り抜き、(再生数が)伸びたんですよ」と、昼間に投稿したポストを見せてくれた。インプレッション数は100万を越えていた。それから、さっきまで会っていたお客さんから届いていたLINEに返事をしながら、インタビューに答えてくれた。
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──今日はどんな1日でしたか?
すごく楽しい1日でした!
──どんな瞬間に楽しいと思うんですか?
お客さんとホテルで一緒に時間を過ごして、最後の別れ際に「あっ、この人はまた会いに来てくれるだろうな」って思えたときがいつも嬉しいですね。
──今日はそう思えた日だったと?
そうですね。あっ、ちょっと電話かけてもいいですか?
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電話の理由を聞くと、最近連絡も取ってなく、もしかしたらもう会ってくれないかもしれないお客さんに電話をかけるということだった。これも移動中にいつもやることの1つだそうだ。
「もしもーしっ! 久しぶり! 元気してる?」
仲のよい旧友に電話をかけるような軽やかさで、電話をしはじめた。まりてんさんが手にしているスマホのスピーカーから、「え? いま着信の表示を見て何かの間違いだと思ってたんだけど。えっ? なんでいきなり電話してきたの!?」という男性の驚いた声が、微かに聞こえてきた。
時間にしておよそ10分弱だろうか。まりてんさんは電話ごしの男性と、百貨店で買い物をしてからホテルにいく予約を取り付けていた。
「あっ、ごめん。今帰りの車の中で。もう着きそうだから切るね! またねっー!」
ラーメン屋の前に止まると、まりてんさんは電話を切った。送迎車での移動中に行われている「SNSでの発信」「LINEのやりとり」「いきなりの電話」というのは、ビジネス風に言えば「新規顧客の獲得」「既存顧客のケア」「休眠顧客の掘り起こし」の作業とも言えるだろうか。
移動中も一切休むことのない姿に戦々恐々としながら、ラーメン屋へ入ることにした。