面接でババを引いたような顔をされた

体力が戻ったところで、コンビニのアルバイトに応募した。面接で7年間ひきこもった話をしたら、それまで和やかに話をしていた面接官が目も合わせてくれなくなったそうだ。

「ババ抜きでババを引いたような表情をしていました(笑)。面接官からすると、ひきこもりは、おそらく理解する材料が少ないので、どのように向き合えばいいのか分からなかったのだと思います。

でも僕は、ひきこもっている自分を認められたから外に出られたのに、社会復帰するならひきこもりを隠さないといけないのかと矛盾を感じました。

そのとき頭に浮かんだのは、体重計に乗ってエラーが出たときの映像です。ひきこもりは人間としてエラーなのかと思いましたね」

地元ではアルバイトが見つからず、名古屋まで行ってキャリアカウンセラーに相談したが、「前例がないので申し訳ありません」と丁重に断られた。

またいろいろな人から、「社会復帰するなら、ひきこもったことは絶対に隠した方がいい」とアドバイスを受けた。

社会復帰しようとしたが、うまくいかなかった当時を語ってくれた
社会復帰しようとしたが、うまくいかなかった当時を語ってくれた

27歳のとき、拠点を東京に移して祖母と2人で暮らし始めた。カウンセラーの資格を取れる学校に通うためだ。

だが、そもそも18歳で上京した際、祖母から愚痴を延々と聞かされたことで精神的にダメージを受け、ひきこもってしまったのだ。

そんな祖母の元に戻って大丈夫だったのかと聞くと、瀧本さんはあっさり言う。

「おばあちゃんの毒は相当強かったけれども、18歳のときみたいにグサッときたり、憎しみを感じることはなかったです。おばあちゃんはそう思っているんだね、みたいな感じで。

僕の盾が強くなったのかわからないですけど。あんなに悩んでいたのは何だったんだと思うぐらい(笑)」

東京に来てもアルバイトの面接が通らなかったので、苦し紛れに公園で悩み相談を始めた。

「悩み相談も含めて、どんな話でも聞きます」と書いたプラカードを持って公園のベンチに座っていると、珍しがって声をかけてくれる人が12分に1組くらいいたそうだ。

「女子高生は好きな人にどのように告白するか、お年寄りの方は余生をどう過ごすか、みたいな感じで。これをやり続けていれば、誰かとつながれるかもしれないと思ったけれども、半年後に管理局の人に『ベンチを占拠しないでください』と怒られてやめざるを得なくなったんです」