突然の動悸にパニック状態に

2021年8月のある休日。自宅でひとりくつろいでいたら、突然胸がバクン、となった。

(え? なに?)
と思うまもなく、鼓動はどんどん速くなっていく。
オノマトペで表すなら、ドッドッドッドからドドドドドとなり、生まれて初めての突然の激しい「動悸」に、大袈裟ではなく死を覚悟した。

もちろん精神的にはパニック状態である。ひとりきりだし休日だし全然収まらないし。
で、救急車のお世話になった。

搬送された救急病院で横になること、2時間。心電図に血圧に血中酸素濃度に採血…さまざまな検査をするもなにか疾患が見つかるわけでもなく、搬送時には140くらいあった心拍数と、やはり140超えだった血圧も徐々に落ち着いていった。
原因は不明、しかしなにか重篤な値が出たわけでもないので、そのまま帰宅となった。

いったい何だったんだろう‥‥と思いつつも、とりあえず検査でなにも出なかったんだから大丈夫だろう、収まってよかった、というのが正直な気持ちだった。

その2週間後の日曜にまったく同じ症状が出た。
またもや休日、またもや家でひとりだった。
喉から心臓が飛び出るんじゃないかと思うほどの激しい動悸と冷や汗、悪心、めまい……また救急のお世話になった。
さすがに不安になり、それから日数をかけて本当にたくさんの検査をした。

写真/AC
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心臓エコー、24時間心電図ホルター、耳管検査、甲状腺CT、頭部CT、ホルモン、脳波……てんかんの検査まで。その間、2ヶ月のうちに同じような症状に6回ほどみまわれた。

ときは集英社オンライン創刊準備のころ。この頃のスケジュールアプリを見ればたくさんのミーティングや会議の予定とともに、検査や診察の予約がびっしりと記されている。

重ねて、ときはコロナ禍まっただなか。未曾有の状況下で謎の発作に悩まされ、病院行脚に明け暮れ、最後のほうでは検査結果を聞きにいくたびに「いっそ、何か見つかってくれ」と思ったほど。今思えばまともな精神状態じゃなかった。

こうした診察や検査の過程で、医師から何度か言われた言葉がある。

「メンタルかもしれませんね」
「ストレスで自律神経のバランスが崩れているのかも」
「パニック発作の可能性もありますよ」

なので、並行して心療内科の門も叩いた。

ストレスね、ストレス‥‥メディアの創刊準備ですごく多忙とはいえ、やりがい抜群、家庭でも人間関係でもとくに悩みはなし。いや、なにがストレスかって、この訳のわからない体調不良がいちばんのストレスなんだよ!…と思いながら。そしてパニック発作でもなかった。

いつかまた動悸が起きるかも…とビクビクして、自由に生活できなくなったり、そのストレスが発作につながるようなバッドスパイラルになってはいかん……と自分なりに考えた。

不安になるな、リラックスしろ……言い聞かせるのは簡単だ。でもこれだけ弱気になっているときには、もう少し安心のバックボーンが欲しい。

写真/shutter Stock
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で、2021年10月、心拍数測定と心電図アプリからのサポートを求めて、Apple Watch Series 7を、Apple表参道で購入した。