TikTokの命運…アメリカに買収されるしかない? 

他方で多くのアメリカ人にとって関心があるのは、TikTokの行方だろう。

このアプリをめぐっては、2024年4月に、親会社の「字節跳動(バイトダンス)」がアメリカ事業を売却しなければ、国内でアプリを実質的に禁止する法律が超党派の賛成多数で可決された。バイデン大統領の署名を経て、今年1月19日に施行されることが決まっていた。

この法律に対して、バイトダンス側は「表現の自由を侵害し、憲法に違反している」として差し止めを求める訴えを起こした。

しかし、昨年12月、連邦控訴裁判所は「法律は憲法と照らし合わせても問題がない」と判断し、訴えを退けたのだ。

そんな中、1月19日にトランプ次期大統領はTikTok禁止法の施行を延期する意向を表明したため、同アプリはサービスを再開。

ただし、引き続きアプリの売却を求められており、そうでなければアメリカでの利用禁止が確定するという状況が続いている。TikTokは日本企業以上に苦境に立たされている。

「トランプ大統領は『中国に個人情報が流れる』と主張し、第1次政権末期の2020年にバイトダンスとの国内取引を禁止する大統領令を発表しました。ただ、時間切れで議会での審議は進みませんでした」

ところで、議会との関係をみると、議会の立法の前に大統領令を発令するというのは、そもそも順番が逆である。

「立法化された法律を解釈して政策に落とし込むのが、大統領令の役割です。しかし、議会は簡単に動かせません。トランプ第2次政権で大統領令を連発しているのも、このような事情があるからです」

2024年の大統領選挙は「トランプ圧勝」という印象が強いが、実際にはすべての州の平均支持率は1.5ポイント差という、今世紀で最も僅差の戦いだった。

下院での議席数も共和党220席、民主党215席と接戦で、これほど拮抗した議会はあまり例がない。

つまり、議席数が拮抗しているため、大統領の一存では議会を動かせないのだ。

「アメリカでは党議拘束がないため、議会運営が難しく、大統領が法律を作るには、議会を動かして法案を成立させ、自ら署名する必要があります。しかし、議会を動かせない状況では、大統領令を多用するしかありません」

そこで、第1次トランプ政権を引き継いだバイデン政権は就任直後、一度「TikTok禁止」令を撤回した。

その後、議会での議論を進め、民主党と共和党が一丸となって法案を成立させ、最終的にTikTok禁止が正式に決定された。