「通信制サポート校」の台頭

そして今年4月、株式会社ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)が通信制サポート校のBe高等学院を開校する。教育分野で最大手企業のベネッセが進出してくるということは、それだけビジネス的にも期待できる分野になってきている証拠ともいえる。

注目したいのは、Be高等学院が「通信制高校」ではなく、「通信制サポート校」だということだ。通信制サポート校とは、通信制高校に在籍する生徒を支援するための学校である。

そのためBe高等学院に入学するには、ベネッセと関係の深い、くまもと清陵高校か創志学園高校に在籍することが前提になる。卒業資格は、両校どちらか選択した学校のものになる。

なぜ通信制高校そのものをつくらず、サポート校をベネッセは選んだのか。その疑問に、Be高等学院学院長の上木原孝伸氏は次のように答えた。

「もともと学校を支援する事業に取り組んできたベネッセとしては、学校法人の運営自体がしたいわけではありません。全国の通信制高校の生徒に共通する、卒業までのモチベーションを維持する、やりたいことを見つけるなどの課題に対して、広くフットワークよく取り組んでいくには、通信制サポート校という枠組みの方がむしろ適していると判断しました」(上木原孝伸氏、以下同)

上木原孝伸氏
上木原孝伸氏
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1969年からスタートしたベネッセの添削式通信教育講座「進研ゼミ」は、小学生から中学生、高校生までをカバーしており、会員数も2023年4月時点で221万人と、かなり浸透している。さらに、模擬試験などでも同社には実績がある。

こうした学校支援で積み重ねてきたノウハウがあるため、「大学受験を意識してBe高等学院を選択してもらう傾向も強いようです」と上木原氏は言う。そもそも通信制高校は働きながら高校卒業資格を取得したい人向けの学校だったが、そのイメージも変わりつつある。

Be高等学院ではいわゆる「勉強」だけでなく、インターンシップで実際に企業で働いてみる講座など、現状の全日制高校では行われていないカリキュラムも多く組まれている。Be高等学院だけでなく、個性的なカリキュラムを取り入れている通信制高校は多い。

通信制といっても、Be高等学院は東京の水道橋や亀有など、首都圏・大阪で11キャンパスを設けており、そこに通いながら学ぶコースを選択することもできる。仲間と交流しながら、オンラインという特性のメリットも活かして学べるようになっているのだ。もちろん、在宅でのオンライン中心の学びも選択できる。

ベネッセの参入で、今後ますます通信制高校が注目されていくかもしれない。そうなると全日制の志望者減に拍車がかかり、現在の全日制主流の高校の在り方そのものが問われていく可能性すらある。

取材・文・撮影/前屋毅

〈プロフィール〉
上木原孝伸(かみきはら・たかのぶ)

教育企業で講師として17年間教壇に立ち、教科指導や教室運営に携わった後、学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校の開校前準備から参画、同校の副校長を務める。
その後、株式会社LITALICOにて発達に特性があるお子さまとそのご家庭にマッチする環境のコンサルティングサービスの事業部長を務めた後、ベネッセコーポレーションに入社。Be高等学院学院長に就任。