子どもと積極的に離れる時間を持つ

育児うつのタカさんが唯一の逃げ道となったのは、SNSだった。

「沖縄に移住した直後にX(当時のツイッター)を始めたんです。元々人材会社に勤めていた経験から、学生の就活や会社員の転職相談にのってました。

本当はリアルでパパ友とかがいればよかったのかもしれませんが、僕の場合はSNSのコミュニティによって『役に立てている』という実感がもてて、気晴らしにもなりました。彼らとの交流にとても救われましたね」

2年間におよぶ育児うつは、コロナ禍が明け、娘が3歳になったタイミングで地元の保育園に預けたことで寛解したという。

タカさんは当時の状況を踏まえてこう振り返る。

「『子どもと積極的に離れる時間』をもっと夫婦で話し合って作っていければよかったなって思います。乳児から幼児に切り替わるタイミングで、義理の両親に預けて夫婦2人で過ごしたり、1人だけの時間をお互い作ったり。

結果的に、一番必要としていたのは『育児の労働力』でした。大人が一人増えるだけで、夫婦2人ともかなり休める。コロナ禍だから難しい面もありましたが、もっと義理の両親やベビーシッターなど外部の機関に頼ってもよかったなって思います」

大学時代は教育学部に所属し、『子どもの愛着障害を起こさないためにはどうするか』について研究論文を書き上げたというタカさん。論文では、『子どもの愛着形成には母親が精神的にも肉体的にも安定することが大事。そのためには父親が家事や育児をより多く担うこと』と結論づけたというが―。

「実際に子どもができたら全くできなかったです。夫婦のうちどちらかの体力ゲージが限界になったら、ケアするのはもう一方の方で。そうするとお互いのゲージを削り合って、疲弊し余裕がなくなって爆発する。よく育児の記事で『夫婦はお互いを褒め合おう』って書かれてますけど、限界までくると無理です。

子どものために自分を犠牲にすることは、結果的に子どものためにならないと学びました。真面目さや責任感の強さがうつを引き起こしてしまうと思うで、子どもから離れることに対して罪悪感を感じず、育児労働力を内外に保持して頼っていくことが大事だと思います」

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

育児うつに陥ったタカさんだが、「たまらなく可愛い」と話す愛娘
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