「最高刑の死刑が宣告される可能性は十分あります」 

当面の起訴目標である内乱容疑については、12月3日に尹氏が戒厳令を宣布すると表明し、国会などの制圧を指示した行為が問題になる。

「戦時などに限られた戒厳令の宣布条件を満たしておらず、戒厳令が敷かれた時でさえも許されない国会の制圧を図ったことが違憲、違法で、最高刑が死刑の内乱罪が適用されると捜査本部はみています。大統領には不逮捕特権がありますが、内乱罪には適用されません」(韓国紙記者)

12月3日夜の戒厳令宣布は、約2時間半後に国会で戒厳解除要求案が可決されたため無効化、これを戒厳軍が受け入れ不発に終わった。

昨年12月3日夜、戒厳令を宣布すると発表した尹錫悦大統領(韓国MBCテレビ)
昨年12月3日夜、戒厳令を宣布すると発表した尹錫悦大統領(韓国MBCテレビ)

「もし国会の議決が戒厳軍に阻止されていれば韓国は今とまったく違う姿になっていたはずです。

与野党や国会の要人を拉致、暗殺し、北朝鮮工作員の仕業に見せかける工作の準備ができていたことを示す証言や証拠が次々と明らかになっています。

議会制民主主義の破壊が試みられたことがはっきりすれば尹容疑者の罪状は極めて重く、最高刑の死刑が宣告される可能性は十分あります」(同記者)

だが、尹容疑者の犯した違法行為はこれにとどまらないとみられている、と韓国紙記者が続ける。

「昨年10月、韓国が飛ばしたドローンが平壌上空まで侵入してきたと北朝鮮が尹政権を非難したことがあります。北朝鮮の謀略宣伝だと西側は相手にしなかったのですが、どうもこれは、韓国軍が北朝鮮を挑発して局地戦を誘発するために実際にドローンを飛ばしていたのでないかとみられているのです。

北朝鮮がゴミ風船を飛ばし始めた直後の6月から計画が動き始め、極秘命令を受けた部隊が3ヵ月の訓練の後に作戦を実行に移したとの証言が軍内部から出ています。軍高官が大統領を意味する『V』の指示だと話していたとの証言も出ています」(韓国紙記者)

昨年12月3日深夜、制圧を図り韓国国会敷地内に入った戒厳軍兵士(韓国MBCテレビ) 
昨年12月3日深夜、制圧を図り韓国国会敷地内に入った戒厳軍兵士(韓国MBCテレビ) 

今年1月に入り、高捜処が国防部などから関連資料を入手し本格捜査に入ったと韓国メディアは報じている。

ドローンを送り、それが北朝鮮を挑発する目的だと立証されれば、法定刑が死刑一択の外患誘致罪にあたるとみられている。

「尹容疑者は、ドローンによる挑発で北朝鮮との局地戦を起こし、それを口実に戒厳令を敷こうとしたものの、北が乗ってこなかったため要件を満たさないまま戒厳令に走った可能性があります。

内乱でも有罪、外患誘致でも有罪となれば、判決が分けられるかどうかは分かりませんが“ダブル死刑判決”を受けるかもしれません。

もっとも韓国は死刑執行を1997年末から止め、再開される見通しはありません。このため尹氏も命までは取られないでしょうが、事実上の終身刑でしょうね」(韓国の弁護士)