精神科の処方薬をお菓子のようにポリポリ食べる父
父親の男性は息子をネグレクトし、管理者に「お前の会社にいい女はいねえか」と尋ねるなど、女好きでもあった。
澤田さんが朝にヘルパーとして入ると、精神科病院から処方された精神安定剤を、小皿に山盛りにして、菓子のようにポリポリ食べていることがよくあった。
昼から酒を飲むなど、粗暴な面があったので、子どもの虐待に気づいても、注意することはできなかったという。
「“これは何のあざですか?” と指摘すると、息子さんは、次回からは着替えて出てくるんです。だから、虐待があるのに気づきながらも、見守ることしかできませんでした」と、澤田さんは無念そうに答えた。
父の死により解放された息子
そんな父親に対し、母である祖母も、ヘルパーたちも腫れ物に触るように接していた。そんな状態だったので、布団の中で父が死んでいることに、1日中、誰も気づかなかった。
「起きていないのは珍しいなと思っていました。だけど、子どもも祖母も、寝ている父に声をかけませんでした」
翌日になっても、起きてこない父をさすがに心配した祖母が確認すると、そのとき初めて死んでいたことが分かった。
「警察の検視になりましたが、結果は、OD(オ―バードーズ)による心不全ではないかとのことでした。
子どもは、結局、児童養護施設に戻ることになりましたが、虐待されていた頃よりも幸せだったと思いたいですね」と澤田さんは、語った。