小5から中堅校を目指す「ゆる受験」という選択も

このような「ガチ受験」に対比する形で注目を集めているのが「ゆる受験」だ。中学受験では一般的に小学4年生から進学塾に通い難関校を目指すが、ゆる受験では小5、6の2年間で、労力を抑えながら受験準備を進めることを特徴としている。

志望校の偏差値のラインを下げることで、習い事や趣味との両立も目指せる。近隣の公立中学の評判が芳しくない場合に私立進学を検討する家庭や、中高一貫校に通うことで高校受験を回避したい方針にも適している。

写真/Shutterstock
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「ゆる受験向けの塾では、生徒一人ひとりの理解度に合わせたきめ細やかな指導を目指しています。大手塾のような規模を拡大する路線ではなく、1〜2店舗の小規模な経営スタイルが特徴です。

一般的な塾が中学受験や高校受験に個別特化しているのに対し、私立中学入学から大学まで、子どもの成長に沿った一貫した指導を行ないます。トップ層向けの塾だけではすべての教育需要に応えられないため、このような小規模な塾は今後も一定数は存在し続けるでしょう」

塾選びの際、難関校への合格実績は魅力的に映るだろう。だが、難関校への進学がすべての子どもにとって正しい選択ではないはずだ。

今回のニチガク騒動のように、受験直前に予備校が閉鎖されることは稀だとしても、全国に数多ある、小規模でも特徴ある塾が生き残っていくことは、子どもたちの将来の選択肢が豊かになることに繋がる。

子どもの適性に合わせて、最適な塾を選ぶことができる世の中になることを願うばかりだ。

取材・文/福永太郎