片山氏の独演会…「BPOに提訴しているところでございます」 

先に行なわれた片山氏の尋問では、斎藤知事に近い維新の増山誠県議が、Aさんのパソコンの中から、Aさんが県幹部やOBらとともに斎藤県政に打撃を与えようと画策したことを示す文書が見つかったとして、その内容を紹介した。

片山氏はこれを受け、「知事の改革を進めさせないというのは、これはある意味クーデターという風に解釈してよろしいんではないかと思っております」と応じ、Aさんの告発は県政転覆という「不正の目的」があったため、通報者が保護される公益通報に当たらない、と主張した。

25日、百条委で証人尋問を受けた片山安孝元副知事(撮影/集英社オンライン)
25日、百条委で証人尋問を受けた片山安孝元副知事(撮影/集英社オンライン)

さらにメディアに対し「知事や副知事が悪。こういう前提に立った報道ばかりだと思ってます」と猛批判を始めた。特にAさんが亡くなったことを「殺した」と出演者が発言した9月のフワイドショー番組を挙げ、「BPOに提訴しているところでございます」と表明。

NHKも「反斎藤派の県職員OB、反対派職員ばかり」をインタビューしたと非難し、地元神戸新聞の報道も問題だと熱弁。ほとんど片山氏の独演会になった。

もっとも、告発文書の記載に絡む不適切な行動については、片山氏も認めざるを得なかった。Aさんは文書で「(斎藤氏らは)県下の商工会議所、商工会に県からの補助金カットをほのめかしパー券を大量購入させた。実質的な実行者は片山副知事」と書いていた。

これに絡み、これまでの調査を基に別の議員が行なった質問で、斎藤氏が政治資金パーティー券の売り先を探すため名簿を集めてくれと片山氏に指示し、これを受けた片山氏が県内の商工会議所に電話をかけて会員名簿を出すよう求め、県の信用保証協会の幹部2人に名簿を取りに行かせていたことを片山氏は認めるしかなかった。

さらに“演説”の後には別の議員が、Aさんの告発は嘘だという幹部らは、なぜ怪文書扱いして無視しなかったのかと質問。

これに片山氏は、企業名も書かれていたので無視できなかったと言いながら、2つ目の理由を挙げた。

「最初に私のとこに来とったらクシャっとしとったのに、最初に来たのは知事とこ来てまっしゃろ。副知事マターやったらいくらでもしときますわ」

自分に届いたのなら握りつぶしたともとれる表明である。

片山氏は7月に辞職するまで、県の内部通報窓口に寄せられた通報に対応する「公益通報委員会」のメンバーでもあった。

「Aさんが県の公益通報窓口に最初に持ち込まず、文書で外部に知らせたのは、片山氏のような人物が通報内容を扱うことを知っていたからでしょう。また告発は不正目的だと言うなら、片山氏はなぜ7月に辞任したのでしょう」と、取材に当たった記者は話す。

さらに県政界関係者は「片山氏は斎藤氏と一緒に沈むのを恐れて先に逃げ出したものの、斎藤氏の再選を見てまた副知事に戻りたくて百条委でブチ上げたような気がします」と話す。

7月、涙を流し退任した片山元副知事(共同通信社)
7月、涙を流し退任した片山元副知事(共同通信社)