「僕は常に勝負していないと不安」
岸谷はまだ23歳。同級生たちは就職活動の真っ最中である。彼のキャリアであれば外資の大手コンサルティング会社にも入れるはずだが、なぜ誰も歩んでこなかった道を歩むのだろうか?
「“みんなと同じになるのは怖い”という一種の強迫観念のようなものがある気がします。
なにかしらの異常状態だと思うのですが、僕は常に勝負していないと不安なんです。
そのような環境で育ってしまったからこその勘違いというか、幸せを感じるシステムみたいなものが自分の中に構築されていないのです。
『勝負して勝ち続ける』『ヒリついている』状態が幸せであり、逆にそれが安心できる状態になってしまいました」
ドロップアウトしてしまった早稲田実業でも、なにも満足のいかないことなんてなかったはずだ。しかし、「戦っていない」ことがむしろ怖くなってしまったという。
「現代人は僕のような考え方の人たちが多いはずです。ある程度戦い続けないと幸せは得られないし、実際に幸せを得ている人間は戦い続けている人間が多い。
だから、『勝負したほうがいい』というのは自分の中で強く思います。というのも、現代人はみんな『やんわりと不幸』な状態に陥っている気がするからです。
みんな、実現したい自分像が大きくなりすぎており、それが現実の自分と異なるせいで、不幸だと感じてしまっているのです」
岸谷の主張する「やんわりと不幸」はインターネットの発達のせいなのかもしれない。SNS全盛期の今、「こうなりたい」や「ああなりたい」という理想はどんどん肥大化していき、それと現実の自分が違いに、違和感を覚えてしまうからだ。
「だから、選択肢としては2つしかない。『理想を下げる』か『現実を上げる』か…。その、どちらかしかありません。
ただ、理想が上がっていくのを止めるのは難しいですよね。だからこそ、現実を上げるしかないと思います」
「現実を上げる」ためには、戦わなければいけない。時には他人を引きずり落とさなければならない。そして、世界でさらに熾烈な争いや奪い合いが起きている。
「これからは日本人も戦いから逃げないことが大事だと思います。戦いから逃げない一方で、自分の中で幸せを感じられるシステムを構築する必要があると。
それができるようになれば、みんなもっと強く生きられるはずです」
新時代の革命家は自身の理想も高い。しかし、それを実現していくために、今日も彼は戦っていくのだ。
取材・文/千駄木雄大