親の昔話を聞く

子どもは自分が生まれる前の親の姿を知りません。親が亡くなったあと、「親の若い頃の話を、もっと本人に聞いておけばよかった」と悔やむ声をよく耳にします。自分のルーツを知りたいという思いは誰にでもあるもの。それを早速、実行しましょう。

親にとっては、子どもが自分に興味を持って耳を傾けてくれるのはうれしいことですし、前述したように、昔に思いを巡らせることは、脳を活性化させ、心身によい影響を及ぼします。

「お母さん、子どもの頃、何が得意だったの?国語?音楽?」「お父さん、高校時代は野球部で、女子にモテたってホント?」と自分が興味あることや、親が喜んで答えそうなことを質問して話を引き出してみてください。

両親の出会いや、昔の恋愛についても話を向けると、親は当時に戻って華やいだ気持ちになるかもしれません。

「お父さんとどこで出会ったの?どこがよかったの?」と。本人(父)がいると照れて言えなかったりするので、母親一人のときに聞いてみましょう。

父親に「独身の頃、どんな人とつき合っていたの?」なんて過去の恋愛を探ってみてもいいかも。「そんなこと言えるか」と苦笑いされるだけかもしれませんが、こうした質問を重ねることで、今まで聞いたこともないような話が飛び出し、自分が知らない親の一面に触れることができます。

思い出の地を一緒に訪れるのもおすすめ。たとえば、親の実家や、親が新婚時代を過ごした場所。そこで懐かしい人々と会って話せば、さらに記憶が次々と呼び覚まされます。

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もう実家や新婚時代の建物がなければ周辺を歩くだけでも、親は「新婚の頃、よくふたりでこの神社にお参りに来たわ」と当時の様子をリアルに思い出すはず。そういう話を聞けるのは子の幸せでもあります。

ただし、親に昔話を聞くとき、決して無理強いしないように心がけてください。質問をして「もう忘れた」「今更、言えるか」などと口をつぐんだら、それ以上は踏み込まない。言いたくないこと、思い出したくない過去もありますから。

イラスト/書籍『親への小さな恩返し100リスト』より
写真/shutterstock

親への小さな恩返し100リスト
田中克典
親への小さな恩返し100リスト
2024/12/13
1,650円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4391164107

離れて暮らす親は気づけばもう70代。帰省のたびに、「親の老い」を実感しませんか? 
その姿を見ると、仕事や家庭の事情などで、ずっと一緒にいてあげることはできないけれど、「いつかなにか親孝行、恩返しをしたい」という気持ちが湧き上がってきます。

ですが、そう思っているうちにも、親は確実に老いていきます。
もしかすると、恩返しができるタイミングを失うかもしれません。
ケアマネジャーとして、介護の現場に長く身を置いてきた私は、そういった子の「後悔」の声を幾度も耳にしてきました。

「もっと好きなごはんを食べさせてあげればよかった」
「もっと一緒に旅行すればよかった」
「もっと話を聞いてあげればよかった」

そんな後悔をしないために、そして親に幸せな晩年を過ごしてもらうために、「恩返し」を始めませんか。

何をすればいいのか、何から始めればいいのか、考え悩む必要はありません。離れて暮らしていてもできる、また、次の帰省時にすぐできる「小さな恩返し」はたくさんあります。

この本ではそんな「小さな恩返し」を12の章に分けて、計100項目をリストアップしました。
できることから一つずつ始めることで、親は「いつまでも元気でがんばろう」という生きる意欲と気力を呼び起こすことでしょう。

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