高齢者の票を買うためのバラマキに過ぎない
給付金を受け取る住民税非課税世帯の75%が高齢者ということにも疑問を感じているという。
「年代別の金融資産残高の分布を見るとわかりますが、富裕層は60代~70代にとても多いんですよ。でも僕のように働かず所得がないから非課税世帯になっている。僕みたいに資産を持つ高齢者がたくさんいる一方で、若い世代はほとんど資産を持っていないんです。どうしても選挙の票を得るための与党による“バラマキ”だろうと思ってしまいますよね」
「給付金のポストについては、年齢の高そうな方からたくさんの“お叱り”のDMをいただいてしまいました。“余計なことを言うな、もらえなくなるじゃないか”といった感じですね。“お前が代わりに給付してくれるのか”というのもありました(笑)。気持ちは分かりますが、やっぱり今の制度は間違っているのではと思います」
では、どんな制度がいいと思うのだろうか。資産の有無を確認して支給するとなると……。
「そのために国が人件費やシステム開発などに税金を使うことになりますよね。そうではなく、少額でもいいから全世帯に給付したほうがマシだと思います。あるいは、働いている世代、子育て世代への減税が必要だと思います。まずは103万円の壁を見直すことが未来につながるのではないでしょうか」
ちなみにそれらの財源としてよく挙がる富裕層の資産への課税についてはどう考えるのかと問うと……
「投資で運用していても、分配金、売買の譲渡益などは20%の税金がかかります。僕も今年は非課税ですが、昨年の所得税は約3億円でしたし、来年は約1億円の予定です。例えばシンガポールだと、これが無税になるんです。海外に行くだけで4億円浮くんですよ。
そんな中で、資産にも税金がかかるとなったら、富裕層はさらに海外へ行ってしまうんじゃないでしょうか。富裕層からの多額の税金がなくなることは、国にとっても痛いと思うんですよね」
ただ、日本が好きだというマサニーさんは、海外移住は考えていないそう。「納税は義務だと思っている」と真っ当な答えも返ってきた。さらに、こんな意見も。
「贈与税を下げて、相続税を思い切り増税するのもいいと思います。高齢者が抱え込みやすい資産を早めにお金が必要な世代に贈与して、消費にまわるようにする方がよっぽどよくないですか? 僕はいま肌で感じているので言えますが、生涯で使えるお金は限られていますし、たくさん持ちすぎていてもしょうがないと思うんですよね」
最後に、今後、さらに住民税非課税世帯への3万円の給付金が予定されているが……。
「僕のような富裕層に支給されても無意味なので、それをアピールすべく3万円のコーヒーを飲むなど無意味に豪華なものに使ってXで発信しようかなと。批判されるかもしれませんが、僕はこの形での給付が間違っていることを社会に伝えていきたいと思っています」
取材・文/金子弥生 集英社オンライン編集部ニュース班
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