退職後も会社と仕事内容への愛情は消えず
大学時代、お酒の専門店でアルバイトした経験から日本のお酒やワインに魅せられ、日本全国のワイナリーを巡ったり、いろんな試飲会に出向いたりして、精力的に活動してきたKさん。そんな中で出会ったのが、出戻りすることとなった古巣の企業だ。
「日本のお酒を世界中に広めたい」
そんな並々ならぬ情熱を抱いて、その会社に新卒で入社。店舗の接客部署に配属され、やりがいを感じる日々だったが、なぜ休職を経て退職するに至ったのか。
「入社3年目のときに、銀座店の販売責任者に抜擢されて。ちょうどオープン1年目の節目で、店舗自体も忙しかったのに加えて、雑誌3社から取材が同時に重なり、『ボジョレー・ヌーボー』の解禁日も近かったことから、通常以上の業務が降りかかってしまったことが大きかったです。
朝11時に出勤して夜中0時まで店舗で残業して、帰宅後に取材の質問アンケートを答える。そういう生活を3カ月続けて、気が付いたらボロボロになっていました」
異変に気付いた上司の勧めで、すぐさま病院を受診し、そのまま休職することとなったKさん。
それでも会社や商品、仕事への愛情から、休職期間中も退職の二文字が頭をよぎることは一切なかった。
ただ「早く戻らなきゃ…」と思えば思うほど、その思いが負担となり、身体が拒否反応を示すたびに休職の延長を繰り返した。
休職から2年半の歳月が経ち、休職期限が切れたことで泣く泣く退職に至ったという。退職後は療養生活を続け、就労移行支援に通い始めたKさん。そこで視野が広がり、次第に前向きになっていった。
「『自分が働ける会社は他にもある』と、その時期ようやく気付くことができました。療養期間中にイギリス映画にハマったことがきっかけで、英語も勉強し始めたんですが、とても楽しくて。今度は英語を使って仕事ができる会社に就職したいなって思うようになったんです」
しかし、障害者雇用枠での転職活動は採用枠も少ないことから苦戦を強いられた。結果的に前述したような形で、古巣へと帰還することになったのだ。