原点は、ホームレスのお婆さんとの交流

昨年春に、新卒時の古巣である社会福祉法人の職員に出戻った真由子さん。3年ぶりに出戻って、まもなく1年経つが、現在の状況を聞いてみた。

「新卒で入職したときは、母子支援施設で働いていたんですが、出戻りで入職した際は、当初から希望していた『ホームレス支援施設』に配属になりました。今は利用者にゴミの出し方やお金の使い方を指導するなど生活支援全般を担当しています。小学生時代からの夢が叶ってすごくうれしいです」(真由子さん、以下同)

溌剌とした笑顔で語る真由子さんの表情からは、日々の充実感が垣間見られた。

真由子さんが働く社会福祉法人では主に、ホームレス支援施設と、経済面や家庭内DVなどを理由に入居した母子生活支援施設の2つの事業で構成されている。

クリスチャンの母とともに、幼少期から教会で、ホームレスの人に向けた炊き出しに参加していたという真由子さん。

福祉の道を志した原点は、小学生のときに経験した“ある出来事”がきっかけだった。

「小学校の通学中、道端で横たわっている70代くらいのホームレスの女性から『何か食べ物持ってない?』って突然話しかけられたんです。びっくりしましたが、なんだか放っておけず…、私は給食のパンをこっそりランドセルに忍ばせて、帰り道にそのお婆さんのところに寄って、パンを分け与えたんです。そこからどんどん仲良くなっていきました。

でもある日、いつものようにパンをお婆さんにあげようとしたら、通りがかりの中年女性に『あの人はホームレスで汚い人だから、ご飯をあげたり喋ったりしちゃいけないよ』って言われました。子どもながら『どうして同じ人間なのに喋っちゃいけないんだろう…』って思ったのが、福祉を志す原点でした」

その後、大学では福祉を学び、生活保護をテーマに研究論文を執筆。社会福祉士の国家資格も取得し、晴れて第一希望だったホームレス支援施設などを運営する社会福祉法人に新卒で入職したのだった。

小学生時代の経験が原点となり福祉の道を志した真由子さん(写真/本人提供、以下同)
小学生時代の経験が原点となり福祉の道を志した真由子さん(写真/本人提供、以下同)