結婚と妻をとっとと手放したその先で

この最初の離婚までに、聖子自身には公私ともにいろいろなことが起きた。
「公」のほうでは、所属事務所サンミュージックからの独立、海外アメリカ進出、セルフプロデュース…「私」の部分ではいくつかの恋愛スキャンダルに見舞われ、神田正輝との関係も仮面夫婦と言われはじめる。

そしてついに、神田との離婚が発表されたときに思った。
「ああ、聖子ちゃんはもう結婚はいいんだな」と。

二枚目映画スターとの「聖輝」の結婚、かわいい子どもにも恵まれた。
かねてインタビューなどでしばしば聖子が言葉にしていた「歌が大好きだから!」のとおり、まだまだ仕事はしたい、なんなら恋だって自由に…そんな松田聖子に「夫」などというものはもう必要ないんだろうな……そんなふうに感じられたのだ。

1997年4月、離婚後のシングルとしてリリースした『私だけの天使〜Angel〜』(マーキュリー・ミュージックエンタテイメント)は、聖子が作詞作曲し、実娘・沙也加さんへの愛と想いを歌いあげたナンバー
1997年4月、離婚後のシングルとしてリリースした『私だけの天使〜Angel〜』(マーキュリー・ミュージックエンタテイメント)は、聖子が作詞作曲し、実娘・沙也加さんへの愛と想いを歌いあげたナンバー

1997年ごろの日本といえば、バブルはとうに弾け、前年1996年には社会党の村山富市内閣が突然の退陣を表明、インターネットがどんどん広がり、ポケモンにたまごっち、渋谷にはアムラーがあふれて…そんな時代だ。
くしくもイギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃もこの年に離婚している。

もはや女性にとって結婚はステイタスでも足枷でもなく、こだわらなくてもいいもの……聖子はまさにそういう風潮を体現してくれたかのようだった。
さすが、松田聖子。

仕事も恋も結婚も育児もぎっちりしっかりつかまえていく彼女はかつて「握力の強い女」と呼ばれた。
そんな聖子が「結婚」と「妻」を手放した35歳。