3期連続で営業キャッシュフローがマイナス
船井電機の倒産に至るプロセスについては不透明な部分も多いが、買収からのプロセスを辿ると、かすかに見えてくるものもある。
会社の潮目が大きく変わったのは、2021年の秀和システムホールディングスによる買収であることは間違いない。
このTOBには3人の人物が深く関わっている。
秀和システムホールディングスの代表取締役であり、2021年7月より船井電機の社長となった上田智一氏。
船井電機の創業者・船井哲良氏の長男かつTOB前は筆頭株主だった、医師の船井哲雄氏。
そして、買収前に船井電機の顧問を務めていた、元NTTぷららの社長・板東浩二氏である。
よく知られている通り、船井電機はテレビ事業の不振が深刻だった。2012年3月期から2018年3月期まで連続で営業赤字を出していたほどだ。しかも、2016年3月期から3期連続で営業キャッシュフローがマイナスだった。
会社の業績が下降線を辿る中、精神的な支柱となっていた創業者・船井哲良氏が2017年7月にこの世を去って以降、34%もの株式を相続したのが船井哲雄氏だ。
しかし、船井哲雄氏は1978年3月に旭川医科大学を卒業し、旭川厚生病院に勤務するなど医師としての仕事に邁進しており、船井電機の経営からは距離をとってきた。
2014年4月には旭川十条病院の副院長に就任。現在は院長を務めている。
そうはいっても船井哲雄氏が会社の行く末を案じていたのは確かだ。相続が完了した翌月の2017年9月下旬から、会社を再成長する道を模索し始めていたのである。