現役世代の声を無視する、“冷たい”政権与党

かつての安倍政権の時代には、現役世代向けの政策を自民党、高齢者向けの政策を公明党という役割分担で幅広い支持を集めていた。

しかし岸田政権以降は支持率のかげりに焦ったか、人口が多く、投票率も高い団塊世代を中心とした高齢者偏重が明確となってきた。

ここにきて「戦後昭和世代が考えるリベラル」を掲げてきた石破氏が首相となり、「高齢者の味方」を自任する公明党と完全に“客層”が一致。

こうして現役世代は蚊帳の外となった。

現役世代の後押しをうけた国民民主党や維新の会が「医療費3割負担の対象拡大」「終末期医療の在り方の検討」など社会保障制度の公的支出そのものの削減による見直しを求めるも、石破自民と公明党は「高齢者に冷たい政治は許してはならない」と社会保険適用拡大など国民負担増で歩調をあわせる。

石破首相と公明党石井代表(石井氏Xより)
石破首相と公明党石井代表(石井氏Xより)

この与党の態度は裏を返せば「社会保障の負担が重すぎるという声は聞き入れない、現役世代に対して冷たい自民党・公明党」というメッセージを国民に送っていることになる。

国民民主・維新があくまで社会保障財政を健全化させるための需給バランスの見直しを訴えているのに対し、それを真っ向から否定するのが与党の方針であれば、世代間の不満や対立はいっそう深刻化する。

事実それらの反発が国民民主の躍進につながっているのは確実だ。

テレビだけではわからない、SNSや動画サイトにおける現役世代を中心とした世論の醸成と投票行動への影響は、今年7月の都知事選における“石丸旋風”を思い起こさせる。

強い風に与党の屋台骨がゆれ動く中、その対抗策として公明党が掲げた高齢者をターゲットとした給付金バラマキ政策は、令和に入ってから多用されてきた「必勝の方程式」だ。