ロシアのウクライナ侵攻もユニクロ人気の背景に?
一方、LVMHが展開するLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)、DIOR(ディオール)、CELINE(セリーヌ)などのラグジュアリーブランドは好調だ。
つまり、欧州のファッションは二極化が進行しており、ユニクロはこの消費者意識の変化にフィットすることができたと見ることができる。
コストパフォーマンスという言葉がある通り、安いだけで売れる時代ではない。LifeWearをテーマとして、天然素材にこだわった高品質な商品を低価格で提供するユニクロが支持されたのだ。
機能性の高さもブランド浸透に一役買っているだろう。エアリズムやヒートテック、ブラトップなどの鉄板アイテムも売れるようになってきたからだ。
欧州は、ロシアからのエネルギー依存脱却で電気代が高騰した経緯がある。
2022年にイギリスは電気代を8割値上げするとして世間を驚かせた。イギリスに限らず、フランスやドイツ、イタリアなどが相次いでエネルギー不足に見舞われ、電気代の値上げが人びとを苦しめた。
ちょうど、ヒートテックなどの機能性の高い衣料の需要が高まったタイミングなのだ。
折しも2023年と2024年の夏には欧州が熱波に襲われ、エアリズムにも注目が高まり、世界情勢や天候もユニクロの味方をしたのである。
SHEINにはない強みを持つユニクロ
競合がいないという強みもある。
現在、イギリスのファッション界を席巻しているのが中国のSHEIN(シーイン)だ。2023年のイギリス事業の売上高が15億5000万ポンドとなり、2022年末までの16か月の売上高を38%も上回っている。
SHEINは典型的な低価格ブランドだが、ファッション性の高いアイテムを安価に販売するのが最大の強み。
SHEINが侵食するのは、H&MやZARAの市場だろう。素材や機能性の高さがセールスポイントのユニクロを脅かす存在には、今のところなりえない。
ファーストリテイリングは欧州の売上収益を、2027年8月期に5000億円に引き上げる計画を立てている。現在のおよそ2倍だ。
足元では、急速に進行していたインフレが落ち着きを取り戻している。市況が変化する可能性もあり、ユニクロにとってはここからが勝負の年となるだろう。
宣言通り欧州でNo.1のブランドとなることができるのか。3年後に売上5000億円を突破できるかが試金石となりそうだ。
取材・文/不破聡 サムネイル/Shutterstock