大河ドラマから『釣りバカ日誌』まで奥行きのある演技力
10月17日、俳優の西田敏行さんの逝去が報じられた。
西田さんは10月8日、映画『劇場版 ドクターX』(12月6日公開)の完成報告会見に出席するなどしていた。
名優の訃報を受け、芸能界からも悼む声が相次いでいる。
西田さんが出演した映画『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)、『アウトレイジ 最終章』の監督・北野武は自身の公式サイトで、
「西田さんの体調がよくないことは知っていたので、ずっと心配していたけど、悲しいことになってしまった。がっくりしています。本当にいい役者だった」
とコメント。
『劇場版ドクターX』で共演した女優の米倉涼子は、西田さんと食事をした際の写真をInstagramのストーリーズに投稿するため、掲載許可の連絡をしたばかりだったという。
西田さんはバラエティに富んだ俳優だった。20代前半に名門・青年座へ入所。
そこで鍛え上げた演技力で、鑑賞者を時には泣かせ、時には笑わせた。
NHK大河ドラマで主演を飾ったのは3度。1990年放送『翔ぶが如く』で西郷隆盛役、1995年放送『八代将軍吉宗』で徳川吉宗役、2000年放送『葵 徳川三代』で徳川秀忠役を務めた。
いずれの作品でも、日本の歴史に残る人物たちが放つ独特の重厚感や貫禄を見事に表現していった。
一方、代表作となった映画『釣りバカ日誌』シリーズでは、釣りをこよなく愛するハマちゃん(浜崎伝助)を演じた。
1作目は1988年公開。日本はちょうどバブル期で、1989年には栄養ドリンク「リゲイン」のCMでサラリーマン役の時任三郎が口にする「24時間戦えますか?」が流行語になった。
仕事のときはバリバリと働き、休日は自分をしっかり癒す。企業戦士たちがオンとオフを使い分けながら、日本経済を支える様が格好良く映った。
そんな時代にあって、隙があればスーツを脱いで釣りに出かけるハマちゃんのどうしようもない姿は、異質かつ痛快だった。
さらに同作での西田さんの親しみやすいフォルムは、「リゲイン」のCMでスーツをカチッと着こなしてギラついていた時任三郎とはまさに対極にあった。
西田さんの“抜け感”が、ハマちゃんのキャラクターの軽快さを生んだと言って良いだろう。