前に進んでいる様子がみえた、横浜拘置所での面会
その後、ワタルは地方の検察に移送される予定だが、数日間は横浜拘置所で過ごすと聞き、私はワタルに会いに行った。誰かが面会してしまうと、その日の面会可能人数を超えてしまう。午前のいちばん早い時間に拘置所に向かった。
受付で手続きをし、別の建物に移動して待合室で呼ばれるのを待つ。待合室には弁護士らしい人、小さな子どもを連れているお母さん、年老いた夫婦がいた。
面会できる部屋は数室あり、スピーカーで持っている番号札を呼ばれ、指定された部屋に入る。病院の診察と同じような感じだ。
部屋に入って待っていると、ワタルがやってきた。ワタルは私服ではなく、拘置所で与えられた上下緑色の服を着ていた。
ワタルは、鑑別所で面会したときより、すこし元気そうに見えた。
「ご飯食べれてる?」
「はい」
「ご飯は鑑別所と同じ感じなの?」
「うーん、同じかな」
面会はたわいもない話から始まった。ワタルは泣いてばかりいた鑑別所のときとは違い、現実を受け入れている様子というか……、不安はあっても、少なくとも前に進んでいる様子だった。
ワタルに、先日の審判の後に「『非行』と向き合う親たちの会」に両親と行ってきた話を伝えた。
「そこってどんな人たちがいるんですか?」
「10代の子どもの非行で悩んでる親や、成人している子どものギャンブルや無職だったりで悩んでいる親の集まりだよ。自分たちが苦しかったから、今度はそういった人を支えたいってお手伝いしている親もいる団体だよ」
ワタルはうなずきながら聞いていた。
「お父さん、お母さんと連絡をとりながら、できることはしていくからね」
「ありがとうございます」
「審判のときは自分の気持ちは言えた?」
「はい、言えました」
「あのね、11月に渋谷で会ったでしょ。あのとき、たくさん話してたら、今回の事件というか、脅されていたこととか気づいてあげられたかな、って思ってるんだ。この間、鑑別所で『9月くらいから、悪いことに関わっていた』って言ってたから」
鑑別所の面会で、職員から注意が入って中断したときの話だ。
ワタルはこちらを見た後に、下を向いてしまった。