テスラのパクリ?

1995年に中国の深圳で、もとは携帯電話用バッテリーを製造する電池メーカーとして誕生したBYD。そのEVの品質や安全性の評価は決して低くない。

自動車のデータ解析を専門とするアメリカのケアソフト社は、BYDの自動車を分解して品質を分析した結果、BYDの低価格帯EVが、アメリカ製の高価格帯EVに匹敵する品質を備えていることが分かったと報告している。

BYDの人気車種 ATTO 3のインテリア
BYDの人気車種 ATTO 3のインテリア

同社スタッフは、当初、BYDを「テスラのパクリ」と考えていたというが、実際に分解して分析してみると、製造技術、装備、外観、内装、走行性能、安全性能、いずれも高水準で、「もし米中間の貿易障壁が無ければ、海鴎(BYDの車種)は米国市場で大きな競争力を持つことになる」と評している。

他にも、欧州のAUTOBEST「Best Buy Car of Europe 2024」で優勝するなど、BYDのEVは世界から高い評価を得ている。

それでは、日本では本当に「あり」なのか、それとも「なし」なのかを検討したい。

日本の市場や消費者の特性を踏まえれば、現時点では、まだ「あり」と言える段階にはないと言わざるを得ない。

自動車に限らず、食品・家電・生活用品・住宅など、多くのジャンルで日本の消費者は「完璧主義」で「安全第一」である。

新しい商品・サービスは「最初から完璧」であることが求められ、どんなに新しくて面白くても、「なんか危なそう」と少しでも思われればアウトだ。

少々話が飛躍するが、この「なんか危なそう」と敬遠する感覚が強いために、日本では多くのデジタルテクノロジーが停滞している。

生成AI・自動運転・スマート家電・メタバース・NFT・ビットコインなど、アメリカや中国では市民権を得ているものが日本でイマイチ普及しない理由のひとつは、「なんか危なそう」で企業も消費者も手を引いてしまうからだ。

「まず安全、次に便利、そしてお得」、これが日本市場の優先順位だ。まず安全がないと、そこで足切りされ、どれだけ便利さやお得さがあっても利用が進まない。

「なんか危なそう」という認識を完全に払拭することこそが、日本における新商品の普及には重要となる。