さらに悪質な「買取再販業者」スキーム
囲い込みはそもそもの取引件数が多い首都圏の中古マンションに集中している。深谷社長によると、肌感覚で10件中2~4件が囲い込みされているといい、業界では当たり前の手法のようだ。そして囲い込みに関しては大手が“目指すべき姿”としてきた理想の形があるという。どういう形式か。
「売主から依頼を受けた大手不動産業者が子分の買取再販業者に買わせる形です。囲い込みをして依頼物件を売らずに干しておき、売主が『この値段では売れない』と勘違いして根負けするのを待って、安い値段で子分の再販業者に売らせるのです。
期限などの都合で現金が早めに欲しい売主に対し、救世主として現れた“白馬の王子様”のように再販業者を紹介します。その後、買ってくれたお礼の『専任返し』という形で再販業者は大手と専任媒介契約を結び、物件が売れればふたたび仲介手数料を支払います」(深谷社長)
この形では、大手が売主―再販業者間の両手仲介で合計6%の手数料を得ることができ、再販業者―買主間の両手仲介で再び6%の手数料を受け取ることができる。安値で売って損をした売主に代わり、大手は“12%”の手数料を手にするのだ。例えば次のケースが想定される。
「この商習慣において、再販業者は売買の差額から利益を得ることができます。例えば売主が5000万円での売却を希望していた物件を囲い込み、根負けするのを待って3500万円で再販業者に買わせる。そして再販業者は物件をリフォームして5980万円で売りに出す形が想定されます。大手が買主を仲介してくれるので再販業者は損することはありません。この取引で再販業者は購入価格の10~20%の利益を得られます」(渡部氏)
このケースで大手不動産会社は3500万円の6%+6万、そして5,980万円の6%+6万円の仲介手数料を得ることができ、総額でおよそ590万円になる。売主は、5,000万円とまではいかなくても、囲い込まれなければ3,500万円より高く売れたかもしれない。買い替えなどで売主の資金繰りに期限があるときに狙われやすいという。