100キロのマンホールも吹き飛ばす「エアピストン」現象の危険性

突き刺すような太陽光。外を5分歩いただけでも汗が吹きだす猛暑日が続いた今夏。ぴゅーっと冷たい風が吹いたかと思い、ふと空を見上げると、黒い雲が空一面を覆い、突然大雨が降りだす。そんな光景は夏の風物詩の一つだが、今夏はあまりに多かった。

局地的で短時間に降る強い雨「ゲリラ豪雨」は、予測困難なことから今年も多くの被害が確認された。

例えば、8月21日夜に東京都内を襲ったゲリラ豪雨では東京メトロ・市ヶ谷駅に大量の雨水が流れ込み、改札口やホームは水浸しに。地上と改札階をつなぐ階段からは大雨が滝のように流れ、SNSではSOSの声とともに被害の状況を映した動画や写真が次々とアップされた。

写真はイメージです
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また新宿駅前の路上ではマンホールが吹き飛んで10メートルほどの水柱があがる事故も発生した。

東京都下水道局によると、吹き飛んだマンホールの蓋の重さは約100キロだったという。幸いにもケガ人はいなかったが、豪雨発生時の危険な現象の一つであることは確かだ。

なぜこんなことが起こるのか。発生の仕組みや現象を日本気象協会の気象予報士で防災士でもある平松信昭さんに聞いた。

「豪雨によりマンホールの蓋が吹き飛ぶ背景には、『エアピストン』と呼ばれる現象が働いています。下水道管の中に入っている空気の空間が、大量の雨水が一気に流入することで圧縮され、内側から外側にかけて強い空気圧がかかるんです。さらに路面が冠水していると、空気孔が埋まってしまっているため、空気の抜け道がなく、マンホールの蓋が吹き飛びやすくなります」(平松さん)

写真はイメージです。写真/Shutterstock
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路面が冠水している状態でのマンホールは吹き飛びやすいほか、蓋のずれや隆起が起こっている可能性も高い。平松さんは「路面が冠水しているところは見えづらく、足を取られてケガをすることも多いので絶対に近寄らないで避難して」と注意を呼び掛けている。