「住人と色の巻」(ジャンプ・コミックス41巻収録)

今回は、「色」に強いこだわりを持つ人たちが住まうマンションをめぐるお話をお届けする。

本作はほぼオールカラーで原稿が描かれており、「週刊少年ジャンプ」では最後の4ページ以外はカラー印刷で掲載された。数ある『こち亀』実験作群のうちのひとつで、週刊連載の中でギャグ漫画表現への挑戦を続けた、秋本治先生ならではのユーモアと遊び心にみちた回になっている

そんな実験作を、少しご紹介してみると……。

大音量の視覚化
中川が派出所に持ち込んだオーディオのうるささにブチ切れた両さんが、爆音で対抗。ふたりの張り合いは次第にエスカレートして……!? 音の大きさを描き文字の大きさで表現し、絵にできないはずの「音」を視覚化している。
「ミュージックライフ!の巻」(ジャンプ・コミックス9巻収録)

絵を描かない漫画
両さんが透明人間になり、作中ではその姿が一切描かれない。見えるのは背景やセリフのフキダシのみ。それでも両さんがどこでなにをしているのかがしっかりとわかる。漫画表現の構造に迫った異色作だ。
「想像力漫画の巻」(ジャンプ・コミックス63巻収録)

ページの上下で2つの物語が同時進行
ゴミ出しを頼まれた両さんの行動が、2つのストーリーに分岐してページの上段と下段で同時進行する。
「人生色いろ!の巻」(ジャンプ・コミックス65巻収録)

……どれも実際に読んでいただかないと、そのおもしろさは伝わらないだろう。ぜひ一読をおススメする。

それでは最後に、本作のコマをいくつか、「週刊少年ジャンプ」掲載時と同じくカラーでお見せしておこう。マンションの各部屋が、住人の嗜好でほぼ一色の世界になっている。

「住人と色の巻」(週刊少年ジャンプ1984年31号)より
「住人と色の巻」(週刊少年ジャンプ1984年31号)より

それでは次のページから、色彩&マンションを題材にした風変わりな実験作をお楽しみください!!