売れ残った“在庫”はどこへゆくのか

ペットショップについて考えるうえで避けて通れないのが、売れ残る子犬・子猫の存在だ。

生体を流通・小売業として販売するということは、それぞれの会社が在庫を抱えていることを意味する。普通に考えれば、抱えた在庫を100%販売できる流通・小売業は存在しない。

ペットショップも例外ではない。

そのことが業者による売れ残り犬の遺棄につながってきたことは、拙著『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日文庫)で詳述した通りだ。

一方で、売れ残った子犬や子猫でも、「価格を下げれば売れる」という考え方も存在する。では実際には、どのような値引きが行われているのか。

写真/Shutterstock ※写真はイメージ
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ペットショップチェーンのAHBでは、年間50匹程度の売れ残りが出ることを明らかにしている。そのうえで、売れ残ってしまった子犬や子猫は、すべてを社員らが引き取ることにしているとする。年間の販売数が約34000匹だから、約50匹の売れ残りというのはずいぶん少ない印象を受ける。同社では、なるべく売り切るために値下げをすることで、売れ残りをこの程度の数まで抑えこんでいるようだ。

「店頭に出してからしばらくすると、1週間単位で値下げを始めます。だいたい4カ月くらい売れないままだと、仕入れ価格と販売価格が逆転します」(岡田寛CA事業本部長)

そして、繁殖業者と直接取引をしている同社にとっては、繁殖業者による遺棄も防ぎたいところ。岡田氏は、そのために「契約ブリーダーが何頭の繁殖犬を持っていて、リタイア犬をどうしているのか、厳しくチェックしています」とも言う。

写真/Shutterstock ※写真はイメージ
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またAHBは、繁殖業者向けに講習会を行っているのだが、すべてのプログラムの終了後に、繁殖業者たちに懇親会の席を用意している。そこにはこんな狙いがあると言う。

「ブリーダーは一匹狼のようなところがあり、横のつながりがあまりない。懇親会の場で横のつながりを作ってもらい、たとえばどうしても廃業せざるを得ない時などに、仲間になったブリーダーに繁殖犬などを引き取ってもらえるようにしています。仲間の業者に余裕がなければ、私どものほうでほかの業者に仲介をしたり、いったん会社の施設で引き取ったりもします」(岡田氏)

実際、契約先は年に数%程度、廃業するところがある。そんな時に手をさしのべるところがなければ、繁殖犬・猫たちには悲惨な運命が待ち受けている。