森喜朗が進次郎に期待するのは“あの時”の純一郎と同じ役割
政治家になるまでの前史を取材して、筆者が小泉進次郎に抱いた印象は意外と“慎重”な人間であるということだ。
特に印象に残ったのが、高校野球デビューではフォアボールを選んだというエピソードだ。彼の本質をそこに感じたのである。アメリカで「見栄えのいい経歴」を作るという用意周到さ、父親の模倣とも言えるパフォーマンススタイル、そして後述するが長老に推されての総裁選出馬と、彼の行動の裏側には常に生来の“慎重”さが見え隠れする――。
一方で、政治家を志す理由が、家柄や父親の影響でしかないところに世襲議員の危うさも感じた。どのような政治を志しているのかという人間としての原点や、政治への情熱が、少なくとも前史からは見出すことができなかったのだ。
2009年の初当選からわずか15年――。進次郎は現在、首相の座を射程圏内に見据えている。彼の総裁選出馬に大きな影響を与えたのが旧安倍派の「陰のドン」とされた森喜朗の暗躍だったとされている。
7月中旬に森、父・純一郎、中川秀直元官房長官、ジャーナリストの田原総一朗との会食で、森が「絶対に進次郎がいい」とプッシュ。進次郎総裁選出馬の流れができたのだ。
「森は過去の成功体験に固執したのではないかと言われています。森が首相のとき数々の失言もあり支持率が8%まで低迷した。自民党内からも森政権では選挙を闘えないと批判が噴出。結局、森は辞任に追い込まれた。後任首相に選ばれたのが小泉純一郎だった。
同じ清和会の政治家でありながら、小泉純一郎は特異なキャラクターで改革のイメージを振りまき、“小泉旋風”というブームを巻き起した。自民党政権が続いているにもかかわらず、疑似政権交代感を演出することができたのです。
同じように岸田内閣も支持率15%あたりで低迷し選挙での敗北を危ぶまれていた。森が進次郎を推す理由は、あのときの小泉純一郎と同じ役割を、進次郎に期待しているのだと言われています」(政治ジャーナリスト)
自民党総裁選において進次郎は森だけではなく、菅義偉、岸田政権の中枢にいた木原誠二や村井英樹らにも推されているとされる。環境大臣しか務めたことがないなど、キャリアと実績が乏しいなかで、本命候補となっている理由は、やはり小泉純一郎の息子であるという知名度とブランドイメージが大きい。
小泉進次郎という政治家が何を成し遂げようとしているのか。まだ国民にその実像は見えてこない――。
取材・文/赤石晋一郎
集英社オンライン編集部ニュース班