イスラエルのメディアが自国の攻撃に疑いを示す

2024年3月25日、国連安全保障理事会はイスラエルとハマスに停戦を求める決議を採択した。それまで停戦案に繰り返し拒否権を行使してきた米国は棄権した。その時点でガザの死者は3万2000人を超え、そのうち1万3000人が子供という惨状であり、対応の遅さは国連安保理の無力さをさらけ出した。

2023年10月に米・ワシントンで行われた反イスラエルデモ
2023年10月に米・ワシントンで行われた反イスラエルデモ
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その2か月前の1月26日、国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は南アフリカがイスラエルをジェノサイド(集団殺害)条約違反で提訴したのを受けて、イスラエルに対してガザのパレスチナ人へのジェノサイドを防ぐ「あらゆる措置」をとるよう命じる仮処分を出した。

最終決定が下されるまでの間、一定の措置を示すことが必要と判断したもので、事態の深刻さを認識したうえでの暫定措置命令である。

イスラエルはガザの住宅地や民間地への攻撃について、「ハマスが民衆を人間の盾にとっている」と繰り返してきた。

しかし、攻撃から1か月を過ぎてガザの死者が1万人を超えたころから、イスラエルの攻撃の異常さに対する批判が世界のメディアで出始めた。2023年11月25日付の「ニューヨークタイムズ」紙は「イスラエル軍の集中攻撃の下で、ガザの民間人の殺害は記録的な増加」というタイトルの記事で「ガザから報告された死傷者数を控えめに読んでも、イスラエル作戦中の死者数の増え方は今世紀に入ってからほとんど前例がない」という軍事専門家の見方を伝えた。

この時点で死者1万4000人、子供と女性の死者が1万人。民間人の死者の多さについて、同紙は超大型爆弾の使用を指摘し、軍事専門家は「イスラエルが密集した都市部に超大型兵器を多用している。高層マンションを破壊できる米国製の2000ポンド(約1トン)爆弾も含まれており、驚くべきこと」と語った。

イスラエルの有力メディアである「ハアレツ」紙は12月9日、ガザ攻撃について「イスラエル軍はガザでの自制を失い、前例のない殺戮がデータで明らかに」という検証記事を掲載し、「今回の攻撃で民間人の死者の割合がこれほど高いのは、戦闘員と非戦闘員を区別する原則が守られなかったからではないか、あるいは(軍事目標を達成するために過度に民間の犠牲が出ることを禁止する)均衡性の原則を軽視していたからではないかと疑われるかもしれない」と書いた。

軍民を区別しない無差別攻撃と、軍事的に不均衡な攻撃は戦争犯罪を構成する要素であり、「ハアレツ」紙は自国の攻撃に戦争犯罪の疑いがあることを示したのである。