派閥にとらわれない動きが火種に?
長年、自民党の権力の源泉として、あるいは政治のしがらみを生じさせる元凶として功罪両面で語られてきた「派閥の論理」が小林氏の足かせになるとの指摘もある。
小林氏はすでに解散した「二階派(志帥会)」の所属である一方、安倍晋三元首相が率いた「安倍派」とも良好な関係を維持してきた。裏金問題によって解散に追い込まれた同派の若手リーダーである福田達夫元自民党総務会長とも気脈を通じているとされる。
前回2021年の総裁選では、安倍晋三元首相が推し、党内屈指の保守論客として「安倍路線の継承者」を自認する高市早苗経済安保担当相の推薦人に名前を連ねていた。
こうした所属派閥にとらわれない横断的な動きを重ねてきた小林氏が、今回ばかりは遺恨の火種を抱えてしまった可能性が否定できないというのだ。
「高市氏にとっては小林氏の出馬によって推薦人の手駒がひとつ減ったわけで、おもしろいはずがない。両者の間に遺恨は当然残るでしょう。ベテラン議員の中には、二階派であるにもかかわらず、安倍派にべったりだった小林氏の政治姿勢に不快感を持っている人もいる。その一人だと言われているのが、二階派で事務総長を務めた武田良太元総務相です」
永田町の事情に精通する、あるベテラン秘書はこう打ち明ける。
武田良太氏といえば、「二階派」で、派閥の領袖である二階俊博元幹事長を支える番頭役として影響力を発揮してきた実力者だ。
岸田政権下で「非主流派」のドンとして暗躍した菅義偉前首相とも関係が近く、岸田首相が総裁選への不出馬を宣言する以前から会合を重ねるなど「次期総裁レース」に向けた準備を重ねてきた経緯もある。
石破茂元幹事長や小泉氏ら、総裁選の有力候補の「後見役」である菅氏とともに来月の政治決戦のキャスティングボードを握るとみられる存在だ。その武田氏と小林氏の間にどんな遺恨があるというのか。
「派閥解散のどさくさに紛れて二階派への仁義も通さずに安倍派に接近していった小林氏に武田氏が激怒したというのです。
総裁選出馬で脚光を集める小林氏に対抗するため、武田氏が狙っているのが加藤勝信元官房長官の擁立です。加藤氏は茂木敏充幹事長が率いた『茂木派(=平成研究会。すでに解散)』に所属していましたが、首相への意欲を隠さない茂木氏に反発する派内の議員にも一定の支持があった。
茂木氏への反発からいち早く派閥を離脱した小渕優子氏も武田氏とともに加藤氏を担ぐ動きがあり、推薦人確保の目途が立てば、総裁候補に名乗りを上げる可能性はあるでしょう」(前出のベテラン秘書)
自民党議員たちの思惑が交錯する総裁選。にわかに台頭した「コバホーク」は、混戦模様のレースを走り抜けて、権力の高みに上り詰めることができるのか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班