馬とともに暮らす遊牧民たちのオリンピック「ワールド・ノマド・ゲームズ」を知っていますか
コロナ禍を経て行われ、日本勢もめざましい活躍を見せたパリ五輪。総合⾺術団体では92年ぶりに銅メダルを獲得し、障害馬術が含まれる近代五種で佐藤大宗選手が銀メダルを獲得したことも話題となった。これを機に馬術や乗馬に関心を持った人も多いのではないだろうか。
一方で、⾺とともに暮らす遊牧⺠の競技⼤会があるのをご存じだろうか。
オリンピックやパラリンピックとはまったく異なる、いわば「遊牧⺠のオリンピック」の模様を、星野博美著『⾺の惑星』(集英社)から⼀部抜粋・編集してお届けする。
『馬の惑星』#1
馬をよく知る遊牧民の競技大会
ノマド・ゲームズは、同じように感じた⼈々の思いから始まったのではないだろうか。
過去3回の⼤会がキルギスで⾏われたことから察せられるように、この⼤会の中⼼は、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタンといった中央アジアの国々やアゼルバイジャンである。
遊牧⺠が多く、⾺の多い場所というと、極東アジアの⺠である私は真っ先にモンゴルを思い浮かべる。それは間違いではない。しかしノマド・ゲームズに限っては、世界の中⼼はモンゴルではなく、もっと⻄の中央アジアなのだ。
これらの地域に共通するアイデンティティは、⽂化の差異や宗教の違いなどはもちろんあるが、13世紀にモンゴル帝国に征服された、ユーラシア⼤陸の東⻄にまたがる広⼤な草原地帯(モンゴルはモスクワやキーウに⾄るまで征服した!)ということができる。
ノマド・ゲームズはモンゴル、オスマン、ティムール、ロシア、清といった帝国が通奏低⾳として響く⼤会であるといえるかもしれない。
文/星野博美
2024年4月26日発売
2,200円(税込)
四六判/360ページ
ISBN: 978-4-08-781750-8
君は、馬だ。どこまでも走っていく馬だ──。
謎の老人が告げた一言から、その旅は始まった。
モンゴル、アンダルシア、モロッコ、トルコ。
土着の馬にまたがり大地を行くと、テロ、感染症、戦争……不確実な世界の輪郭が見えてくる。
「馬の地」が紡いできた歴史と人々の営みをたどる、さすらい紀行。
【目次】
はじめに
第一章 極東馬綺譚
火の馬
君は馬
馬と車
そこに馬はいるか
第二章 名馬の里、アンダルシア
レコンキスタ終焉の地、グラナダ
コルドバのすごみ
アンダルシアンに乗る
馬祭りの街、へレスへ
第三章 ジブラルタル海峡を越えて
二つの大陸
青の町、シャウエン
砂漠の出会い
第四章 テロの吹き荒れたトルコ
文明の十字路
雪の舞う辺境へ
トルコのへそ、カッパドキア
第五章 遊牧民のオリンピック
未知の馬事文化
いざ、イズニクへ
馬上ラグビー、コクボル
コクボルの摩訶不思議な世界
おわりに