「パートナーの存在がなければもっとひどくなっていた」

退院したはいいものの、またODを再発してしまった麗さんに歯止めをかけてくれたのがパートナーの存在だった。

「パートナーは、私がODして家で倒れていたり、ずっと吐き気や目眩で苦しんでいたりするときを見ていたので、さすがに心配になって病院に行こうと提案してくれました。私からしたら、過去にだまされるような形で精神病棟に入院していたので、すごく抵抗がありました。パートナーの存在がなければもっとひどくなっていたんだろうなと」

結局、通院での治療は変わらず、ODしないためにはどうすればいいのかを、パートナーや担当医とともに話し合った。家に1人でいる時間を作らないこと、ケースワーカーに相談して自立支援とつながることなど、自身が不安になる環境から遠ざけ、社会復帰していこうと決めた。

麗さんにとってパートナーが心の支えだった(写真はイメージです) 写真/Shutterstock.
麗さんにとってパートナーが心の支えだった(写真はイメージです) 写真/Shutterstock.

 そこからは仕事を見つけ、パートナーとも婚約することで、麗さんの生活は安定していく。すると次第に、自身が抱えている精神疾患とも折り合いをつけられるようになった。

「正確にいえば、薬物依存やアルコール依存から、完全に決別できたかといわれるとそれはそれで違うんです。今でもいつ自分がまた再発してしまうか不安に思うときはありますし、薬やアルコールを過剰に摂取したくなる瞬間もあります。

ただ、自分の意思ではコントロールできなくても、日々の生活を規則正しく送ることで、薬やアルコールを遠ざけています。例えば、不安になるひとりの時間を作らないよう、友人との予定を入れたり、日中に自助会の予定を入れて自分を戒めたりと、ODしないよう外堀を埋める努力をしています。

きっと依存に関しては、一生完治することはなく、今後も付き合っていかないといけない。あくまでも今は依存に走る気持ちを抑えるために、なんとか生活しているといった感覚なんです。それぐらいアルコールや薬物依存に陥ることは怖いことだと思います」

現在は仕事もプライベートも順調な日々を過ごしている麗さんだが、いつまたアルコールや処方薬に手を出してしまうか、自分でもコントロールできない恐ろしさを常に抱えている。それほど薬物依存やアルコール依存は恐ろしい病気と言える。


取材・文/佐藤隼秀 写真/本人提供