ずっと逃げていることが正義でいい
――曲作りをする上で考えた『逃げ上手の若君』のイメージは、具体的にどういうものでしたか?
北村 『週刊少年ジャンプ』の作品で逃げることに特化した漫画はなかったと思うし、それでいてバトルシーンには『週刊少年ジャンプ』らしい熱さもあり、仲間とのつながりも描かれていて、弱さも持つ主人公に感情移入もできて。歴史的におもしろいところを切り取っているのも新しくて、歌詞がどんどん湧いてきましたね。
――歴史好きの矢部さんとしては、『逃げ上手の若君』をどう受け取りましたか?
矢部昌暉(以下、矢部) まず「そこをやるんだ」って思いました(笑)。その時代だと足利尊氏が圧倒的に注目されるし、北条氏でも、大河ドラマで主人公だった北条義時とか、教科書で習う北条時宗がまず思い浮かびますよね。だから、この作品で初めて北条時行という名前を知った方もたくさんいらっしゃると思うんです。
「逃げる」を武器に戦うのも意外だったけど、読めば、「逃げるって間違ったことじゃないんだ」っていうことがすごくよくわかるんですよね。松井(優征)先生特有のギャグと伝えたいことのバランスが絶妙で、本当におもしろい作品だと思いました。
――『プランA』という曲のタイトルに込めた意味は?
北村 「逃げることが第一の作戦でいい」ということです。この作品はアクションシーンもかっこよくて、「ずっと逃げていることが正義でいいんだ」と思えるんです。
僕も子どもの頃から逃げることは恥だっていう考え方を植え付けられてきた感覚があるんですけど、逃げることが大事な瞬間もある。
逃げることがプランBじゃなくてプランAでもいいという意味です。