巧みなマーケティングで業績は回復するが…

幸楽苑の代替わりが行われたのは2018年11月。当時、幸楽苑はお子様セットのラーメンに従業員の「指の一部」が混入した問題からの回復が遅れており、さらにドミナント戦略を外れる遠隔地への新規出店や、「いきなり!ステーキ」とフランチャイズ契約をして店舗の転換を図るなど、経営は迷走気味だった。

2018年3月期に21億円もの減損損失を計上。32億円を超える純損失を出している。

実質的な二代目の新井田昇氏が社長に就任してからは、期間限定商品を毎月投入。テレビCMやSNSを活用したマーケティング策を駆使し、立て直しを図った。

2019年3月期の売上高は前期比7.0%増の412億6800万円、16億3600万円の営業利益(前年同期は7200万円の営業損失)を計上。滑り出しは上々だった。ただし、前期で巨額の減損損失を出していたため、代替わりによる黒字転換は半ばお膳立てされていたとも言える。

ここからが試練の連続だった。2019年の台風19号の水害で工場が操業停止に追い込まれ、240店舗が一時営業休止となったのだ。そしてその翌年に新型コロナウイルス感染拡大という悪夢に苛まれることになった。

2020年3月期の売上高は台風の影響で7.3%の減収、2021年3月期は3割もの減収に襲われた。

※決算短信より筆者作成
https://hd.kourakuen.co.jp/ir/library
※決算短信より筆者作成
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コロナ禍で幸楽苑はサービスの幅を広げた。「幸弁」という弁当の販売に踏み切り、カレーの提供を開始。ラーメンや餃子など店内で食べられる全商品をテイクアウトができる体制を整えた。さらにドライブスルーも開始。お粥などの朝食メニューの販売も行った。

外食を取り巻く環境が激変する中、あらゆる需要を獲得しようとしてラーメン店としての芯の部分を失うことになる。