田舎の小さな町だからこそ起きた油断

また、報道されているかぎりでは、犯人に気づいた地元警察官がひとり、屋根に上ろうとして犯人に銃で脅され、上れなかったという経緯があったそうです。

屋根に上るために両手が塞がれていて、銃を持てなかったとの話もあり、やむを得なかった可能性もあります。シークレット・サービスの狙撃手は、そうしたやりとりを見て狙撃が遅れた可能性もありますが、それもまだ検証を待つ段階です。

今回の事件後、シークレット・サービスの幹部が「会場外の警備は地元警察の担当」と発言したことで、責任逃れだとの批判が湧きましたが、後にチートル長官は「全責任は自分にある」と発言しています。

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ただ、警備計画の杜撰さはあるとしても、地元警察も会場外の危険性について、かなりの油断があったことは否めない印象です。

会場外の警備に緊張感がまったくなかったのは事実でしょう。米メディアの現地取材では、事前に地元警察が周辺住宅などの警戒パトロールをほとんどしていなかったことも明らかになっています。田舎の小さな町だからといって、やはり油断があったということでしょう。

なお、犯人の発砲直後のシークレット・サービスの動きはとくに問題はありません。大統領警護部の黒スーツ(特別捜査官)たちがトランプ前大統領を警護し、会場から速やかに避難しました。

さらに、重装備の「対襲撃班(CAT)が素早く会場内の警戒にあたってます。CATも特殊作戦部所属の特殊チームですが、彼らは制服部隊ではなく、特別捜査官の訓練を受けた精鋭部隊です。

文/黒井文太郎