「仕事を評価する」は結果のみではNG
二番目の「仕事を評価する」ことは、別に文句を言ったり、批判することではなく、やっていただいた仕事の結果のみならず、その過程にも目を向けて、「いかに、こちらが助かったのか」を伝えるということです。
やってもらって、ここは良かった。この点に気を付けてもらえばもっと良くなる。「この部分は大変だっただろうな」と思うことに対して礼をもって伝えるということです。
これをやることで、相手のモチベーションを高めることができ、人間関係も強くなり、結果として仕事の質も変わってくるのです。
支払いに関しては、言わずもがなです。
私はあるイギリス人の上司と上手くいかず、出向期間を終え帰任するにあたっても望む状況でないことから、コカ・コーラ社を離職し、一ヵ月ほど無職になった期間がありました。
この時に痛感したのが、本当に人の態度が変わるということでした。
会社という後ろ盾がなくなるとはこういうことかと思いました。会社を辞めた途端に掌を返したように言葉遣いが変わり、急に私を見下したような粗雑な態度をとる人がいるのです。
その一方で取引先の皆さんからは本当に優しい言葉を掛けていただき、なかには仕事を探してくれた方もいました。結局は元のコカ・コーラのグループ会社に収まったのですが、この時の経験は私のそれまでの人に対する意識を大きく変えました。その時、取引先の一人である秋田さんが私にこう言ってくれました。
「他の人は私たちを単なる仕事の振り先としか見ていないことが伝わってくるのです。嫌な思いをするということではないけど、一緒に仕事をしているという感じではなかったんです」と。続けて彼は「山岡さんはきちんと私のことを見てくれて、一緒に仕事をしてくれてありがたかった」と言ってくれました。
しかし、私がしていたことは至極、当然なことです。
やって欲しいこと、望む成果物を相手が理解してくれるまで伝えること、その成果を分かち合い、良かったこと、こうしたらもっと良くなることを話し、仕事に対する対価をきちんと払うこと、これだけです。思いがけない秋田さんの言葉から、改めて、三つのルールを守ることの大切さを知ることとなったのです。
仕事の向こうにある人を見る。この三つのルールをいまでも大切にしています。
文/山岡彰彦 写真/Shutterstock