松本人志は紛れもなくお笑い界のゲームチェンジャー 

粗品は、25歳だった2018年にコンビで『M-1グランプリ』優勝、26歳だった2019年にピンで『R-1ぐらんぷり』優勝している。しかも両大会とも史上最年少で頂点に立つという快挙を成し遂げている。

この二冠達成の実績から、粗品の笑いの才能は誰もが認めるところ。きらりと光るセンスがあり、既存のお笑い界のなかでも非常に優秀な芸人だ。

2018年のM-1で優勝した霜降り明星(写真/共同通信)
2018年のM-1で優勝した霜降り明星(写真/共同通信)

しかし、松本は次元が違っていた。

26歳だった1989年に今なお続くご長寿番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)、28歳だった1991年に伝説のコント番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)のレギュラー放送をスタートさせている。

この2つは社会現象を起こすほどムーブメントを巻き起こしたが、ただヒットしただけでなく、その後のお笑い界に変革を起こしたエポックメイキングな番組だったといえる。

ときには皮肉的に、ときにはサイコに……それまで誰も思いつかなかったような斬新な角度からの笑いを、松本は次々とアウトプットしていく。そして、新しく世に現れた“松本人志のセンス”を、後続の芸人たちやバラエティ番組がアレンジしながら真似していく。

松本は紛れもなくお笑い界のゲームチェンジャーだった。“松本以前・以後”で日本のお笑いは確実に変わっている。

だが、粗品は今のところそういった決定的なゲームチェンジを起こせていないのだ。

余談だが、テレビ業界において霜降り明星はかなり失速している。

2018年の『M-1』優勝で本格ブレイクした霜降り明星は、全盛期には全国ネットのレギュラー番組が10本近くあった。

だが今年7月からはコンビのレギュラーはわずか1本になる模様。フロントメンバーを務める『新しいカギ』(フジテレビ系)は、今年の『FNS27時間テレビ』(フジテレビ系)のメインに抜擢されるなど絶好調だが、今月末で冠番組『霜降りバラエティX』(テレビ朝日系)の終了が決定済で、残るは『新しいカギ』のみになる。

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もちろん今の時代、テレビの成否が芸人としての成否ではない。実際、粗品は個人のYouTubeがチャンネル登録者数205万人、コンビとしてのYouTubeがチャンネル登録者数212万人(6月18日現在)と大成功しているので、本人に焦りはないだろう。

とはいえ、テレビ業界での存在感が薄まってきているのもまた事実なのである。