なぜ蓮舫議員だけが高圧的だったかのように言われるのか?

<観点3:「2位ではダメ」発言の発端>

一般的には「蓮舫議員が『2位ではダメなのか』に固執した」と言われているが、むしろ「1位(=2位ではダメ)に固執したのは文科省・理研」と思われる。

具体的には、蓮舫議員が「2位ではダメなのか」を問う質問は計3回(48分9秒〜50分6秒、55分10秒〜32秒、59分24秒〜1時間10秒)あったが、それらのすべては直前の質問者が「1位を目指す理由(=2位ではダメなのか)」を質問してもまったく回答できないため、蓮舫氏が言葉を噛み砕いたり、視点を変えて更問いしたのだ。ちなみに、1位になる必要性について、最初に質問したのは現立憲民主党代表・泉健太議員(45分49秒〜48分8秒)であった。

<観点4:「2位ではダメ」発言の意味>

一般的には「『1位になる必要性はない』という事業見直しの宣告」と言われているが、正しくは「『スピードでは1位になれなくても、利用者の使い勝手も含めて競争すれば事業の価値を見出せるのでは』という事業継続への助け舟」であった。

この助け舟を蓮舫議員は3回以上(53分33秒〜50秒、59分24秒〜1時間10秒、1時間5分10秒〜1時間8分15秒)も出したが、文科省・理研は1位を獲ることが目的化した回答を繰り返したため、事業見直しに至った。ちなみに、事業仕分けの約2年後(2011年)に文科省・理研が完成させたスパコン「京」は、この助け舟とおおむね同じ方向性で修正されており、蓮舫氏の助言は的確であったといえる。

<観点5:評価者の態度>

一般的には「蓮舫議員が特に高圧的だった」と言われているが、正しくは「注目される蓮舫議員の言動の一方、他の評価者に高圧的言動が見られた」であったと思われる。映像を見ればわかるとおり、文科省・理研は質問を無視したかのような一方的な言い分の主張が目立ったため、一部の評価者には以下のとおり厳しい言動が見られた。

・泉健太議員が文科省への質問中に「(説明に)責任が感じられない」等と苦言(28分15秒〜29分0秒) 
・金田康正 東京大学大学院教授が事業発足時の目的を質問して文科省に回答させた後、「まったく違います」「歴史的経緯を理解していない」と全否定した後、正解を逆にレクチャー(39分4秒〜43分25秒) 
・松井孝典 東京大学名誉教授が文科省への質問中に「説明が矛盾だらけ」「そんな馬鹿なことない」(53分55秒〜55分10秒)等と苦言

相手の要領を得ない説明姿勢を踏まえれば、どれも十分に理解できる範囲だが、特に金田康正教授のように相手に説明させた後で全否定して公衆の面前で正解を逆にレクチャーする行為(=相手に恥をかかせる行為)は、見方によってはハラスメントと捉えられかねない。

一方、全72分の映像を観れば明らかな通り、蓮舫議員は上記のように相手を責めたり、発言内容を否定したり、恥をかかせる言動は皆無。しかし、あたかも蓮舫議員だけが高圧的だったかのようにキリトリ編集した映像をテレビは流し続けた。それは、蓮舫議員がハッキリと意見を言う女性であることと決して無関係ではないだろう。

以上の通り蓮舫氏の「2位じゃダメ」発言は、「報道のキリトリ」と「実際の発言」に大きなギャップがある。とはいえ、これまで「報道のキリトリ」が広く拡散され過ぎたため、現実を受け入れることが難しい読者も多いだろう。その場合は、やはり映像を全編自分の目で見て判断して頂きたい。

*全72分の議論の詳細、虚像を拡散した報道の具体例は、筆者のtheLetter「【都知事選2024】蓮舫氏「2位じゃダメ」発言 15年越しの真実」(2024年6月9日)参照

文/犬飼淳