「こんな事件を起こしてしまって本当にまいってるの」
6月13日の午後5時ごろ、コンビニでの仕事を終えて店外に出てきた母親は、茶髪にロングスリーブTシャツとジーパン姿、少しやつれた表情だった。
記者の直撃に「ええ、A子が逮捕されたのは知り合いから聞きました」と時おり声を詰まらせながら話を続けた。
「A子はほとんど家に帰ってこないから、今回の事件についても、知り合いから『A子ちゃん逮捕されたみたいだけど』と聞いただけで『もう何がなんだか......』って気持ちなの。昨日もマスコミに自宅をピンポン押されて本当に迷惑してて。
最後にA子と会ったのは、5月の上旬ごろだったと思う。私はふだん夜勤のパートに入ってるから家ではいつも寝てるだけで、その日もふだん通りの会話をしたあとに『それじゃあ仕事行ってくるわ』って言ったら『いってらっしゃーい』みたいな感じで終わったの」
母親が最後に会話を交わしたとき、娘はすでに女子高生を殺害した後だったとみられる。それから何日か経ち、自宅に道警の捜査員が訪れた。
「警察の人に『娘さんについて話を聞きたい。ふだんはどんな仕事をされてますか?』と聞かれました。『え、なにがあったんです?』と問いかけても、逮捕されたとかは教えてくれなくて、その後に知り合いから逮捕されたって聞いた感じなのよね。
もちろん信じたくないよ。信じたくはないけど、テレビではああやって報道されてるわけだからね。だから私も何とも言えない。A子をかばうつもりは一切ないけど、こんな事件を起こしてしまって本当にまいってるの」
母親から見たA子は、A子が小学校の卒業文集に寄せた文章のように、友達や家族思いの優しい少女でしかなかった。
「あんな事件を起こしてしまったけど、小さいころのA子は、お姉ちゃん思いの優しい子だった。毎日のように外でお姉ちゃんとダンスを踊って、『お母さん見てー』と言ってニコニコ笑ってるような子だったの。
小学生のころに帽子を振り回してたら、同級生の女の子にたまたま当たってその子の親に謝りに行ったことはあるけど、私から見たらいい子だった」
そんなA子は小学校高学年になると、不登校気味になったという。
「ある日いきなり『学校行きたくない』って言い出したから理由を聞くと、どうやら友達との人間関係で悩んでいたらしいの。私も詳しく事情を聞こうとは思わず、『じゃあ休めばいいんじゃない?』って感じで接してた。中学校に上がってもA子は部活にも入らなかったし、そこでも不登校気味だったの」