スタメン分析 ファームの王様はどうして一軍に定着できない

今年の陣容とかでなく、ソフトバンクの25歳までの若手でチームを作ったらどんな顔ぶれになるのだろうか。

捕手=渡邉陸(18年育成1位・神村学園高)、一塁手=廣瀬隆太(23年3位・慶應大)、二塁手=三森大貴(16年4位・青森山田高)、三塁手=井上朋也(20年1位・花咲徳栄高)、遊撃手=イヒネ・イツア(22年1位・誉高)、左翼手=正木智也(21年2位・慶應大)、中堅手=笹川吉康(20年2位・横浜商高)、右翼手=生海(22年3位・東北福祉大)、指名打者=リチャード(17年育成3位・沖縄尚学高)

魅力のある選手が並んだが、私が選んだ今年のレギュラー候補はこの中にいない。若さに魅力はあっても、一軍での実績が少ないので、小久保新監督は抜擢に勇気がいるだろう。歴代監督の抜擢しない習慣が積もり積もって、筑後のファーム施設には素質が高く評価された未完の大器が塩漬けされたままになっている。

レギュラー陣の血の入れ替えは考えていないのだろうか。たとえば中村晃は過去5年間、100安打に届かなかったシーズンが3回ある。将来の幹部候補生で、黄金時代の主力でもある中村をレギュラーから外すのはつらいと思うが、正木智也、廣瀬隆太、井上朋也たち若手が飛び出すためには小久保新監督が考えなくてはならない問題だ。

今宮健太、周東佑京、さらに獲得したばかりの山川だって次代の若手を優先して控えに回してもいい。そうしないと、ソフトバンクは現在の「普通に強い」状況から抜け出せないと思う。最後に今年もリチャードをレギュラー候補に推したい。

リチャードは今季25歳なので〝若手〞と呼ぶのはこれが最後になるが、22年に続いて23年もファームの成績が尋常ではないのだ。注目したのが長打率。

22、23年のファームで数人しか達成していない長打率5割超え(200打数以上)を、リチャードは2年続けて実現している。歴代、同記録を達成しているのはイチロー(オリックス)、中田翔(日本ハム)、柳田悠岐(ソフトバンク)たち数人しかいない。彼らはファームで傑出した成績を挙げた翌年に一軍定着、のちに主力としてチームに貢献している。

予想スタメンには中村晃を入れているが、将来を睨めば、ここにリチャードが入ったほうが健全だと思う。

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◇タイトル経験者の二軍での傑出した成績とリチャードとの比較

イチロー 1993年打率・371安打69本塁打8打点23長打率・640出塁率・466

中田翔 2009年打率・326安打105本塁打30打点95長打率・674出塁率・367

柳田悠岐 2011年打率・291安打73本塁打13打点43長打率・518出塁率・375

村上宗隆 2018年打率・288安打105本塁打17打点70長打率・490出塁率・389

リチャード 2022年打率・232安打73本塁打29打点84長打率・562出塁率・348

リチャード 2023年打率・225安打53本塁打19打点56長打率・521出塁率・364


村上は、長打率は4割9分だったが、OPSは一流の証、8割を超えている。22年のリチャードはそれを上回る9割超えである。イチロー、中田、柳田の経歴を見ればリチャードは一軍の主力に羽ばたいていなければおかしいが、そうはなっていない。