日経新聞では絶対に書けない
──でも、景気全体から見ればいいことではありませんか。
よくはないよ。金融機関のほうが儲かるというのはあまりいい話じゃない。逆に言うと国民はそのしわ寄せを受けていることになる。
銀行が儲かる仕組みをもうちょっとバラしちゃうとね、白川方明さんが日銀総裁だった時からやっている話で、一般企業や個人事業主は銀行に当座預金を持っているけれど、これは財布代わりだから、金利がつかない。でもその当座預金を銀行がそのまま日銀に預けると、これには金利がつくんです。0.1%くらいだけど、銀行ぜんぶ合わせると200兆円ぐらいあるから、それで2000億円まるまる頂きということになる。
さすがにこれはちょっと批判があるから、200兆円をちょっと超えると金利が少なくなってきて、さらにそれ以上になるとマイナス0.1%になる。そのいちばん高額のところのマイナス金利という話を強調するんだよ。だけどプラス金利のほうがでかいから、ほとんど関係ない。
──じゃあマイナスと騒いでいるわりには儲かっている?
マイナスになっているのは銀行が日銀に預けている巨額の当座預金のほんの一部だけで、ほとんどがプラス金利で丸儲けしているから銀行収益は底堅いんだよ。企業のほうは金利をもらっていないのに、それを預かってそのまま日本銀行に持って行くと銀行は金利をもらえるんだから。
これは白川日銀時代に導入された。それ以前は銀行から日銀への当座預金も金利ゼロでした。それが当たり前だよ。日銀はお札を刷って儲かっているから、その利益の一部を銀行に分け与えている。私はこれにずっと反対しているんだけどね。
──もうやめたということにはならないんですか。
日銀の中のルールで始めたことだから、それもできるはずなんだけどね。
──法律じゃありませんからね。
でも金融界の猛反対があってできない。一度もらったものはすべて頂きということでね。安倍政権の時でもできなかった。
──テレビとかではよく金融正常化とか言っているじゃないですか。
銀行は当座預金のプラス金利でもらいすぎているんだよ。それなのに自分のいただいたものは正常化したくない。
──本当の意味で正常化と言ったら金利ゼロにすることじゃありませんか。
白川日銀の前に戻すのが正常化だよね。
──これはマスコミも書けない?
マスコミがこれを書いたら金融機関の広告収入がなくなるからね。日経新聞では絶対に書けない。とにかく報道しない自由を駆使するわけです。
──なかなか腹立たしい話です。
普通の企業からすれば、当座預金で金利なんかもらったことはないのに、よく金融機関は平気でもらっているなと思うでしょう。本来であれば日銀納付金という形で国庫に入ってきたお金なのに、その一部を金融機関に還元しているということであります。
(2023年12月28日)
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