クレジットカード会社の未来
──もう一つお聞きしたいんですけど、今後クレジットカード会社はどうなりますか?
金融業界も規制の塊の世界でね。たとえば銀行は昔、クレジットはあんまり綺麗な仕事じゃないからというので、ぜんぶ子会社か関連会社にやらせていたんだよ。だからクレジット会社は利ザヤで儲けていたんだけれど、銀行の本業のほうがなかなか大変になってきて、背に腹は変えられないから、どんどんクレジット業務を浸食し始めた。そうすると従来のクレジット会社は苦しくなると思うよ。
だって、銀行のほうは預金があるから圧倒的に調達コストが安い。クレジット会社は自分で資金調達できないから、銀行からお金を借りてそれを貸しているところもある。既存のクレジット会社は徐々に銀行に飲み込まれていくんじゃないかな。
──QRコード決済のPayPayのようなサービスはどうでしょう。
銀行の決済がちょっと高かったり不便だったりすると伸びる可能性はある。でもあれは融資じゃなくて決済だから、デジタル通貨が普及したらなくなるよ。そもそも間に立つ意味がなくなる。みんなアプリで終わっちゃうもの。究極的には、中央銀行がデジタル通貨を発行すると金融業界はすべて要らなくなるよ。
──逆に言うと、デジタル通貨はなかなか普及しないということですか。
金融業界も生きていきたいから、既得権者たちが中央銀行のデジタル通貨発行に猛反対する。中央銀行が本格的に進出したら、デジタル通貨関連業者は全員討ち死にですよ。
──でも、どこかの国が本気でそれをやり始めたら流れはそうなる?
金融業界のない国では時々やっているけれどね。だけど一般的な国なら、さすがに銀行を潰すわけにはいかない。クレジット業界は潰れてもいいけど、銀行業界は守ろうとするよ。銀行は最後まで中央銀行とくっついているから、それに依存して生き残るだろうね。
だけど、銀行といっても地方銀行は大変だよ。銀行には都市銀行と地方銀行とがあるけれど、地銀はもうあまり存在意義がないものね。地銀よりどちらかというと、いまだにフェイストゥフェイスの昔ながらの商売をやっている信用金庫のほうが強いと思うよ。一方、都銀はデジタル化して対面業務を減らしているでしょう。間に入った地銀はどっちつかずだからつらいところだよ。
──地銀でまとまって都市銀行みたいになるようなことはないんですか。
いまさら割り込めないでしょう。信用金庫は地元の商店街と昔ながらのやり方を維持して生き残ると思うけれど、地方銀行にはこれからイバラの道が待っているよ。金融業界もいよいよIT化が進むからついていけないところも多いだろうしね。
──IT化でだいぶ様変わりしそうですね。
クレジットカードだって昔なら番号を入力すればそれで終わりだったけれど、いまは本人認証サービスの3Dセキュアとかワンタイムパスワードみたいに複雑になっているでしょう。そのうち目の認証だけですむようになるかもしれないけれど、手にチップを埋め込むみたいな形も考えられる。そういうのにも対応しなければならないしね。
SFの世界がやがて現実のものになる。資本力のないニッチなところは少しずつ脱落していくことになるよ。
(2023年11月6日)