善意を利用した詐欺の多様性

悪どい詐欺が横行するのは、災害時などの非常事態でもよく見られるという。

「地震など大規模な災害が発生した際に義援金を詐取する“募金詐欺”という犯罪も善意を利用した犯罪です。今年1月に発生した能登半島地震に便乗し、自治体を装って義援金や寄付を集めるという悪質商法が多数発生しました。国民生活センターが注意を促していましたし、不審な電話や訪問には注意が必要です」(小川氏、以下同)

また、息子や孫になりすまし、高齢者から巨額なお金を騙し取る『オレオレ詐欺』も、子供を助けたいという親の善意を利用した犯罪だといえよう。被害金額の大きさにかかわらず、この手の善意を利用しようとする犯罪は一定の被害数がある。

「財布を落として…助けてください」と忍び寄る犯罪者…今も昔も、警察官までも騙される、同情を誘って善意を利用する犯罪「寸借詐欺」に要注意_2

人の善意を踏みにじるような人もいるが、なかには本当に困っている人もいるはずだ。“寸借詐欺”の疑惑があった場合、どう対応すべきだろうか。

「現在は誰もがスマホを持ち歩く時代なので、当人が知り合いに連絡したり電子マネーを使用したりして、当人自身で対処するのが一般的です。なかにはスマホが使えず現金の持ち合わせもなくて困っているというケースもありますが、その場合は交番へ誘導するのがいいでしょう。

交番が近くになくてどうしても困っているというのであれば、お金をあげるという心持ちで渡すのがいいと思います。許容できない金額は渡さないこと。

『念のため身分証と顔写真を撮影してもいいですか? お金が帰ってきたら写真は削除します』と提案し、拒否するようであればこちらも対応できないと判断するのもひとつの方法です」

「財布を落として…助けてください」と忍び寄る犯罪者…今も昔も、警察官までも騙される、同情を誘って善意を利用する犯罪「寸借詐欺」に要注意_3
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今回紹介した事例以外にも善意につけ込む犯罪は残念ながらある。自衛のために警戒心を持ちながらも、助け合いの精神を大切にしたいものだ。

取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio) 写真/shutterstock