保険制度の活用で積極的なAI利用を促進せよ!

とはいえ、生成AIのビジネス利用が始まって間もない現在において、保険制度の開始はトラブル防止だけではなく、積極的な生成AI利用につながるかもしれない。

「文化審議会の議論を踏まえますと、生成AIの基本的な考え方は定まってきているので保険制度の拡大が進むことは十分考えられます。保険制度を整備するなら、生成AI画像、動画、テキストなどといったすべて包括する制度構築は難しいため、各生成AIサービスが独自整備していく流れになっていく可能性が高いかもしれません。

ただし、生成AIによるトラブルは、規模が大きくなりやすく、損害賠償の範囲や賠償金額の設定上限を見誤ってしまうと上手く運用されない可能性も考えられます」

テイラー・スウィフト、海上保安庁も巻き込まれた生成AIトラブル…国内では初の保険制度開始も前途多難か…現役弁護士が語る生成AI最前線_4
すべての画像を見る

保険制度が整備される一方で、AIコンテンツそのものの扱い方も事業者に問われるようになる。

「個人的には、特に生成AI画像については、クリエイターへのリスペクトが重要になると考えています。技術の進歩によって解決される可能性もありますが、少なくとも事業者側は法的な問題のみならず、クリエイターへのリスペクトを持ったAIの使い方や、AI生成物の“見せ方”や“見え方”にも気をつけていくべきでしょう」

取材・文/文月/A4studio 写真/shutterstock