自民党が劣勢の大村氏を応援する理由
そうしたなか、永田町では自民と立憲がそれぞれ独自に実施した情勢調査の結果が出回っている。筆者が入手した自民の情勢調査によると鈴木氏が39.9ポイントを獲得し、29.3ポイントの大村氏に対して大幅にリード。立憲の調査でも傾向は同じで、鈴木氏28.2ポイントに対し、大村氏20.9ポイントとなっている。
鈴木氏は衆議院議員や市長を務めていた経験もあり、知名度がある分、大村氏よりも支持を伸ばしているようだ。
しかし、自民党は劣勢の大村氏を応援する方向で調整している。その背景には複雑な静岡県における政財界の事情がある。
静岡県に本社を構える有名企業といえば、浜松市にある自動車メーカーのスズキであるが、そこで最高経営責任者などを務めた鈴木修相談役は川勝知事の後ろ盾として活動。
静岡県がリニア中央新幹線の着工に反対を続けているのも、表向きはトンネル工事が地下水に影響を与え、大井川の水量が減少してしまうからだとされているが、実際のところは静岡を素通りするリニアに鈴木修氏が強く反対しているという事情が大きい。
この鈴木修氏はこれまで鈴木康友氏の支援もしてきたため、鈴木康友氏が次の知事となれば、鈴木修氏が今後も県政に強い影響を及ぼし続けるのではないかと懸念する政財界関係者は多い。
さらに、スズキの本社が浜松市で、鈴木康友氏が前浜松市長であることから、”浜松色”が強く出すぎていて、他地域が反発する可能性もある。特に静岡市は静岡大学と浜松医科大学の法人統合、大学再編をめぐって浜松市と対立してきており、両者の溝は深い。
自民党はこうした事情を勘案して、鈴木修氏の影響力に懸念を示している県内の財界関係者や、浜松市以外の地域の票をまとめ上げることができれば、大村氏が逆転可能だと考えたようだ。
実際に自民党静岡県連の増田享大幹事長は大村氏を支援する理由について「(元副知事として)全県的な視点で課題を捉えている」と語っている。