浅くても川底の様子はわかりにくい
山でキャンプに行く人は、川の上流付近でレジャーを楽しむことが多いと思いますが、上流は水温が低めなのはもちろん、流れも下流に比べて速いです。
また、浅い場所は安心と思いがちですが、浅い場所でも流れが速いことがあります。たとえ膝程度の深さでも、流れが速いと大人でも流されてしまうので、遊ぶときは大人も子どももライフジャケットを着用しましょう。
ライフジャケットはいわば、「川のシートベルト」のようなものです。ライフジャケットを正しく着用することで、常に頭部が水の上に出て呼吸を確保でき、流れのある川でも浮いていられ、多くの場合、命を守ることができるので、装備しておきたいアイテムです。
また、川底の形は水の流れ方や強さなどで変化します。流れの速い「瀬」は浅く、流れがゆるやかな「淵」は深いものです。場所によって深さや流れの様子は一定ではなく、それらが複雑に絡み合っているため、見た目ではわかりにくく、浅いと思っていても一歩先には深みがあるかもしれません。
さらに水際の護岸や浅瀬の石などのコケ、濡れた石やコンクリートなどはとても滑りやすくなっています。滑った後に、深いところまで流されると、溺れることに直結してしまうので、浅いから安心とはくれぐれも思わないようにしてください。
さらに、春は天候が不安定なため、その場所が晴れていても、上流で雨が降っていたり、ダムの放流などの影響で、水嵩が急に増えることがあります。増水すれば、浅かった場所も急に深くなってしまいます。そして流れの強さが増し、流されやすくなってしまうこともあるので、事前の準備で活動場所の地形や上流側の天候の情報を入手しておきましょう。
水難事故でよくあるのが、川に近い場所でバーベキューしたり、遊んだりしていて遊具やサンダルなどを川の中に落としてしまい、拾おうとして川に入ってしまうパターンです。その場合、ライフジャケットなどの準備もしていないので、川に入るのは大変危険な行為です。
解説した通り、川は見た目では浅いと感じても、川底が見えにくく深みや複雑な流れが生じているところがあります。無理して川の中に入らないようにする、準備や対策なしに子どもだけで遊ばせないようにするなどしてください。
川は身近に自然を感じる場所だからこそ、そこに潜むさまざまな危険を知って、準備や対策をしっかり行ない、ゴールデンウィークの水辺のレジャーを楽しんでいただきたいです。
※記事内のイラスト、写真は河川財団「No more水難事故2023」より一部抜粋・転載
取材・文/百田なつき