不支給は認めないとされた例も
公務員と民間企業では事情が異なるところもあるが、そもそも退職金というのは「給料の後払い」という側面があり、それを不支給にするというのは、「それなりの悪質な事情が必要だ」というのが現在の裁判所の考えである。
今回のX先生の行為については、「勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく正義に反する」と判断されたといえるだろう。被害生徒の心情を考えれば当然の結果である。
ちなみに同じ公務員でも、警察官が不支給処分の取り消しを提起し、裁判所に認められたケースもある。
警察官が上長にあたる巡査長に頭突きをしたり、飲食店の店員に「ブッ壊すぞコノ野郎!」と絡んだりする暴挙を働いた事件である。結局このトンデモない警察官も懲戒免職、そして退職金不支給処分となったが、同じように取り消しを提起。
裁判所は「懲戒免職には違法性がない」と判断したが「退職金不支給処分は違法である。1290万円を支給すべきである」と判断した(横浜地裁 R5.9.13)
非違行為は多種多様であり、その非違行為が裁判所でどのように判断されるかどうかは、このようにケースバイケースである。
会社員がなんらかの事由で会社側から解雇された場合も、必ずしも退職金が支給されないわけではないが、山形県の高校教諭のような悪質なハラスメント行為は許される行為ではなく、退職金不支給処分が合法となる可能性が高い。
くれぐれも留意すべきである。
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