アマゾンの物流を支える「3つの戦略」

それでは、アマゾンの物流を支える3つの戦略について、より具体的に考えていきたいと思います。

まず、Vast Selection(幅広い商品)からお話ししましょう。

そのためのポイントは、次の3つになります。

・大型センターを確保する
・商品棚をたくさん利用する
・調達を多様化する

アマゾン創業者が語った「今後10年間変わらないこと」…爆速返金「24時間以内」アマゾンの大躍進を支えたキャンセル商品の取り扱い_3

1つずつ説明しましょう。


・大型センターを確保する

アマゾンが所有するビルの1つに「ドーソン(DAWSON)」と命名したものがあります。ドーソンは、ガレージの一角を倉庫代わりに創業した同社が、1996年、顧客の求める幅広い書籍に対応した本格的な通販事業を展開するために、初めてのFC(フルフィルメントセンター:アマゾンの物流拠点)を設置した通りの名称です。「ドーソンの大型センター(当時としては)がなければ同社のビジネスは成り立たなかった」という教訓を忘れないために命名したと言われています。

同社が設置したFCは、延べ床面積11万坪強、1500人が雇用できる規模があり、現在はこれらの規模の大型センターを準備することを第一義にしています。
 

・商品棚をたくさん利用する

大型センターを確保できれば、それだけたくさんの商品棚を入れることは可能です。ただ固定の棚を入れてしまうと、棚の位置によって商品の保管やピッキングのしやすさに違いが出てきます。また、作業スタッフが移動するスペースも確保する必要があります。

そこでアマゾンが多くの物流センターで導入を進めているのが、「アマゾンロボティクス(Amazon Robotics)」です。「ドライブ(Drive)」と呼ばれるロボットが「ポッド(Pod)」と呼ばれる専用の商品棚を随時移動させることにより、固定式の商品棚より最大約40%多くの在庫を保管でき、スペースの節約が可能となり、商品の品揃えを増やしていくことができます。

・調達を多様化する

アマゾンジャパンの創業時、2000年のときは書籍のみの単品で、170万アイテムの在庫を保管していました。それから毎年のようにカテゴリーを広げていき、2005年には10ストア(=10カテゴリー)、1000万アイテムを超えました。2009年には「アマゾンベーシック」としてPBの取り扱いをスタート。2017年に生鮮食品も扱うアマゾンフレッシュ、アマゾンビジネス、ビューティーストアを拡大オープンするなど、自社での取り扱いカテゴリーを広げています。

特に、アマゾンフレッシュについては、2022年11月、温度管理を徹底した専用物流拠点「アマゾンフレッシュ葛西フルフィルメントセンター」(延べ床面積:約6000㎡)を開設、生鮮食品全体の商品保管・出荷能力の拡充を進めました。

また、協業による品揃えの拡大も進めており、食品スーパー(ライフ、バロー、成城石井、アークス)との協業によるネットスーパーの運営、アイスタイルとの協業によるコスメ・美容の総合サイト「アットコスメ(@cosme)」の公式ストアもオープンしています。